産前休暇の取得届を信用したら、大失敗する一歩手前

お客様から電話で連絡が入りました。いつもは、メールでのやり取りだけなので何かあったのかと思いつつ、お話を伺うと~
「先月から産休(産前休暇)を取っている社員の産前産後休業取得者申出書を提出したら、健保組合から電話が掛かってきまして。」
続けて
「先々月から保険料の免除ができるって連絡で、給与計算で社会保険料を急いで返金することになりました。」

産休自体は先月からですが、先々月から年次有給休暇を使用して休んでいたとのこと。こちらの企業様、初めての出産休暇を取得したそうで、手続きについても産休前に一通り説明したところでした。産前産後休業取得者申出書の産前産後休業開始年月日は「産前休暇の最初の日」とお伝えしていました。

(しまった、これやったかぁ)▶日本年金機構:産前産後休業取得者申出書

従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が産前産後休業を取得したときの手続き
1.概要
(1)産前産後休業期間※中の健康保険・厚生年金保険の保険料は、被保険者・事業主両方の負担が免除されます。
※産前42日(多胎妊娠の場合は98日)、産後56日のうち、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間
(2)申出書の提出にあたり、産前産後休業期間中における給与が有給・無給であるかは問いません。
(3)申出書の提出は、産前産後休業をしている間または産前産後休業終了後の終了日から起算して1カ月以内の期間中に行わなければなりません。
(4)保険料の負担が免除される期間は、産前産後休業開始月から終了予定日の翌日の属する月の前月(産前産後休業終了予定日が月の末日の場合は産前産後休業終了月)までです。免除期間中も被保険者資格に変更はなく、将来、年金額を計算する際は、保険料を納めた期間として扱われます。

大阪社労士事務所・産前休暇の届出書を信用したら、大失敗するところでした

対象の社員は出産予定日の4週間ほど前から産前休暇の取得申し出をし、2週間ほどは年次有給休暇を取得していました。その理由は、出産手当金より年次有給休暇の方が得(10割支給なので)、時効で消滅しそうな年次有給休暇があったので計算して考えた、らしいです。

建前では、年次有給休暇の取得理由は訊いてはいけませんし、このお客様でも年次有給休暇の取得理由欄は任意となっており、何も書かれておりません。いちおう、妊娠・出産のためなら産前休暇と見なすことができるんです…。

親切な健康保険組合のご担当者のおかげで、お客様に保険料の免除分の損害を与えることなく、助かりました。

他の顧問先様の産前産後休業取得者申出書をチェック

この話を伺い、過去7年分の産前産後休暇を取った社員さんの届出書控えを確認しました。
(保険料の時効は2年ですので、そこまで遡って調べる必要は無かったかも知れませんが念のため。育児休業給付の手続きの際に、出勤簿関係が必要になりますので、そこでもチェックできます。)

「産前休暇の取得届などの書類」(ざっくり休暇届)と「産前産後休業取得者申出書」のチェックでは開始日は合っていて当たり前。ところが調べた限りでは、数カ所を除き、皆さん出産予定日の6週間前からしっかり産前休暇を取っています。それどころか、6週間前より前から年次有給休暇を取得している方が多いという状況で、免除ミスがなく安心しました。

産前産後休業取得者申出書の届出には添付書類は必要ありませんが、出産予定日の確認のため、母子健康手帳のコピーはいただいております。念のため、その予定日をベースに産前産後の休暇期間計算をし直します。ときどき、間違えていますので…。

残り数カ所ですが、診療所で予定日の2週間前から産前休暇を取られた従業員さん。給与計算をしていて、出勤簿もいただいており、産前は本当に2週間でした。もう1カ所書けるところは、私の記録では「できるだけ出勤するので」とメモがあり、予定日の4週間前からは産前休暇を取られていました。が、その前の2週間は出勤したり、年次有給休暇を取っていたり。ラストは、「キリの良いところまで出勤する」と連絡をいただいたところ。15日締めで翌16日から産前休暇を取得、ただし残り日数を考えても、前月の末日には届かない。

改めて、お客様に損害は与えていないことが分かりました。運が良かっただけかも。

産後休暇は

産後休暇は原則8週間ですが、取る取らないという選択の余地はありません。

ですので、どうしようもできません。

保険料の免除は、産前産後休暇、育児休業が月末まである場合は、免除されます。今回の冒頭の事例では、例えば6月分から免除の予定が「妊娠・出産のための年次有給休暇を取得したことで」5月分から免除されることに。今日7月9日で育児休業が終了したなら、前月の6月分の保険料まで免除されると。

(月中の14日間とか、賞与の場合の免除の1ヶ月は、別途お調べください。というか、下にコピペしています。)

育児休業の場合の育児休業等取得者申出書

▶日本年金機構:育児休業等取得者申出書

保険料の免除のことも記載されているので、そのままコピペします。

従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が育児休業等を取得・延長したときの手続き
1.概要
(1)育児・介護休業法による満3歳未満の子を養育するための育児休業等(育児休業および育児休業に準ずる休業)期間について、被保険者は、事業主へ申し出を行い、事業主が「育児休業等取得者申出書」を日本年金機構へ提出します。
(2)申し出により、健康保険・厚生年金保険の保険料は被保険者・事業主両方の負担が免除されます。
(3)この申し出は、被保険者が次のアからオの育児休業等を取得するたびに、事業主が手続きします。
また、この申し出は、育児休業等の期間中または育児休業等終了後の終了日から起算して1カ月以内の期間中に行わなければなりません。
ア.1歳に満たない子を養育するための育児休業
イ.保育所待機等特別な事情がある場合の1歳6カ月に達する日までの育児休業
ウ.保育所待機等特別な事情がある場合の2歳に達する日までの育児休業
エ.1歳(上記イの場合は1歳6カ月、上記ウの場合は2歳)から3歳に達するまでの子を養育するための育児休業の制度に準ずる措置による休業
オ.産後休業をしていない労働者が、育児休業とは別に、子の出生後8週間以内に4週間まで2回に分割して取得する休業(産後パパ育休)
(4)毎月の報酬にかかる保険料免除期間は育児休業等を開始した日の属する月から育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までです。また、開始日の属する月と終了日の翌日が属する月が同一の場合でも、育児休業等開始日が含まれる月に14日以上育児休業等を取得した場合は免除となります(令和4年10月1日以降に開始した育児休業等に限る)。
(5)賞与にかかる保険料(育児休業等期間に月末が含まれる月に支給された賞与にかかる保険料)についても免除されます。ただし、令和4年10月1日以降に開始した育児休業等については、当該賞与月の末日を含んだ連続した1カ月を超える育児休業等を取得した場合に限り免除となります。

注意したいのは、1年、1年半、、、、、で手続きが必要なことです。

まあ、産前産後にしても育児休業にしても、添付書類はありません。少し乱暴な言葉を使うと「産後休暇はどうしようもないけど、産前休暇と育児休業は、企業が従業員は妊娠・育児のために休んでいる」と言えば、実際には各取得者申出書の書き方次第ですよと。
(私じゃなく、冒頭のある健康保険組合の担当者が言ったらしいです。)

給付の場合

給付は、健康保険から出産手当金、雇用保険から育児休業給付金があります。

出産手当金は、申請時に賃金台帳や出勤簿の写し等は不要です。が、実際に内容を企業の担当者なり、社会保険労務士が代行する場合は賃金台帳や出勤簿の写しは必要になります。それらがないと書類は書けません。

育児休業給付金は、申請時に賃金台帳や出勤簿の写し等を添付書類といて要求されます。社会保険労務士が代行する場合であっても、添付を要求されます。

ですので、年次有給休暇や特別休暇で給与・賃金が支払われている際には、その日は保険給付の支給対象日から除外されます。

結論

今回反省する部分がありました。まさかと思った産前休暇可能期間での年次有給休暇の取得。ネット検索してみると、意外と事例あるんですね。

他にも、このブログで産前産後育児の休業関係で書いたもの
「産休・育児休業の時の社会保険料を引かれています」
育児休業の深い闇

令和4年10月から施行された「産後パパ育休(出生時育児休業)」、こちらも中小企業のお客様がほとんどなので発生しないかと思っていると、すでに相談、手続きが数件。給与計算はしていないので助かっていますが、手続きは結構短期間に集中します~。

社会保険労務士だと書面・メールでやり取りして、書類を書きます。今回ご連絡をいただいたお客様は労務相談顧問でご契約をいただいており、日々の法定帳簿書類のチェックまでは行っておらず。

少ないとは思いますが、産前休暇・育児休業に+年次有給休暇を取得する従業員・社員がいる場合はご注意を、とくに年次有給休暇・特別休暇で月末をまたいだとき。社内の人事総務ご担当者が手続きする場合は間違わなくても、外部の社会保険労務士が代行する場合は要確認です。

※守秘義務の関係で、脚色しています。

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