事務所衛生基準規則のチェックで、意外な義務違反
大阪市内では、今テナントビルの建て替えが流行っています。高層化、現代化の対応が主でしょうか。とくに北区や西区、中央区では建設途中のビルを多く目にします。小型のホテルもすごく増えています。
(そう言う状況が目につくのは、単に私自身の通勤途上のためかも知れません。)
で、ある企業様から次のようなご相談を受けました。
「オフィスを移転・引っ越ししたので、安全衛生法の関係について教えて欲しい。」
引っ越しと安衛法にどんな関係があるのか不安だったのですが、現地に着いてお話しを伺ったところ、次のような相談でした。
「労働基準法は良いのですが、労働安全衛生法での違反事項や抜け落ちがあれば、指摘して欲しい。」とのこと。それも、書面は不要なので口頭で構わないという。
(実は全くの準備不足だったのですが、テナントビルに入居するくらいなので、建設業・製造業ではないです。事業場として~)
常時使用する労働者の数が50人以上であることは明かしても良いかと思います。そうなると、衛生委員会、産業医、ストレスチェック、あれやこれやが思い浮かびます。
取りあえず、私に与えられた時間は2時間で、すでに説明を受けた時間とヒアリングだけで相当な時間を使い、残りは数十分。
「休養室の設備はどこにありますか?」と私。
「衛生委員会の議事録の周知はやりますか?」と続けて、私。
「化学物質の管理についてチェックしています?」ともう一押し。
休養室・休養所
事務所衛生基準規則を貼っておきます。
▶e-gov法令検索:事務所衛生基準規則
休養室・休養所は、同規則の21条に規定されています。
(休養室等)
第二十一条 事業者は、常時五十人以上又は常時女性三十人以上の労働者を使用するときは、労働者がが床することのできる休養室又は休養所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない。
令和3年12月から改正施行された内容の公式パンフのリンクを張っておきます。
▶厚生労働省:ご存知ですか?職場における労働衛生基準が変わりました
このパンフから引用します。
●随時利用できる環境であること
常時 50 人以上又は常時女性 30 人以上の労働者を使用する事業者は、休養室又は休養所を男性用と女性用に区別して設ける必要があります。これらは事業場において病弱者、生理日の女性等が一時的に使用するために設けられるもので、長時間の休養等が必要な場合は速やかに医療機関に搬送又は帰宅させることが基本であることから、随時利用できる機能が確保されていれば専用の設備である必要はありません。
また、休養室又は休養所では体調不良の労働者が横になって休むことが想定されており、利用者のプライバシーと安全が確保されるよう、設置場所の状況等に応じた配慮が求められます。
具体的にこの程度は準備しておく必要があります。
- 男性用・女性用で、少なくとも2カ所以上は休養室・休養所として利用できるスペースを設けること。空きスペースで構わない=使っていない会議室等。
- ベッド状にできるもの(マットレス、ソファーベッドなど)、布団・毛布・ブランケットなどの掛けるものが備え付けられていること
- 目隠しやパーティションは使えること
すぐにでも、対応するとのこと。
●休憩室は、努力義務ですので、今回は指摘していません。
衛生委員会
衛生委員会は、ちゃんと開催されていたのですが、移転・引っ越しに伴って新たな問題が発生したそうです。それは、「掲示板がない」ことです。以前のテナントビルの際には、掲示板が有ったのですが、今回の移転に伴い「無粋なものは全て無くす」という方針から無くしたとか。
今までは簡単な通達や連絡事項については、物理的な掲示板を利用していたのですが、そこを突っ込むと「○○というグループウエアを使っていますので、そちらで貼り付けます」とのこと。あっさり解決してしまいました。
○○というグループウエアは知識としては知っていましたが、私桑野が利用したことのあるのは某団体に所属していたときのサイボーズオフィス、今結構使っているTeams程度です。
(社内の連絡用に、メッセージアプリを使うなら、Teamsの方が使えるかも知れません。通話もビデオ会議もできます、無料でもです。)
参考に、e-gov法令検索から貼っておきます。
労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)
(委員会の会議)
第二十三条 事業者は、安全委員会、衛生委員会又は安全衛生委員会(以下「委員会」という。)を毎月一回以上開催するようにしなければならない。
2 前項に定めるもののほか、委員会の運営について必要な事項は、委員会が定める。
3 事業者は、委員会の開催の都度、遅滞なく、委員会における議事の概要を次に掲げるいずれかの方法によつて労働者に周知させなければならない。
一 常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けること。
二 書面を労働者に交付すること。
三 事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイル又は電磁的記録媒体(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体をいう。以下同じ。)をもつて調製するファイルに記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。
4 事業者は、委員会の開催の都度、次に掲げる事項を記録し、これを三年間保存しなければならない。
一 委員会の意見及び当該意見を踏まえて講じた措置の内容
二 前号に掲げるもののほか、委員会における議事で重要なもの
5 産業医は、衛生委員会又は安全衛生委員会に対して労働者の健康を確保する観点から必要な調査審議を求めることができる。
化学物質の管理
これについては、事務系の事業場だから化学物質と無縁と言えません。そのため、化学物質の取り扱いについて確認したところ「わかりません、ただし含まれていないと思います」とお返事。
いきなり、パソコンや文具類しかない職場で「化学物質はありますか」と問われても的確に返答はなくても仕方有りません。まあ、キッカケです。
こういうときの報酬?
2時間ほど事業場にいましたが、労働基準法に広げることはせず、おもに安全衛生法の周辺だけという今までほとんど経験したことのない業務でした。
だいたいセミナー講師料相当をいただきましたが、ぶっつけ本番のような形でしたので、最適解をご提案ご案内できたかどうかは分かりません。
ただ、相談の終わりの方で「休養室・休養所は思い出せませんでした(衛生管理者の担当者)」「大掃除、年に1回しかやってませんが、アウトですね(別の衛生管理者の方)」「化学物質の管理強化は読みましたが、弊社にも関係あるんですね(社労士勉強中)」等々、お言葉をいただきました。
また、ご縁があれば幸いです。
※守秘義務の関係で、大幅に脚色しています。
大阪社労士事務所
【大阪社労士事務所は、就業規則・労務相談をメイン業務とする社会保険労務士事務所です。】
年次有給休暇の管理、有休の計画的付与制度の導入、働き方改革の支援、就業規則の変更・見直し、各種規程の策定も行っています。
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