高年齢者の賃金設定は、こうする・202106

高年齢者の賃金設定をどうすれば良いのか、そう言うテーマで同業者などとの勉強会、経営者団体でのセミナーを受けて、備忘録的に残しておきます。裁判対策は考えておりませんので、悪しからずご了承ください。また、70歳までの就業機会確保についてもふれておりません。

最初に、結論を書いておきます。
条件:60歳定年制、65歳まで希望者全員を嘱託再雇用

  • 嘱託再雇用時の賃金設定(安全版)
    • 定年前の80%以上。
    • 職務内容は、変更する。変更するのが難しい場合でも、「人材育成、技術や技能の伝承」を盛り込んだ業務にする。あるいは、正社員と比較して簡単な業務とする。
    • 嘱託再雇用時の諸手当については、正社員と同様の名称とする。基本給・役職に比例しない手当については、嘱託時も同額(同率)とする。(手当の名称・条件で悩むのなら、と言う個人的思い)
    • 役職は必ず変更する。

3つ目の諸手当については、嘱託社員の就業規則や賃金規程等の変更見直しが必須です。賞与や退職金についても何らかの基準で支給するのが安全でしょう。

職務内容については、今までの数十年の勤務実績を否定するような職務に変更するのは危険です。

ここまで、勉強会や研修会での内容をざっくりまとめました。私の個人的な主観ではなく、世間の専門家はこんな感じかと。

大阪社労士事務所・高年齢者の賃金設定は、こうするのがベスト・202106

弊所・大阪社労士事務所のお客様の現状

キレイにはいかないです。

定年前に管理職であった方については、そのままの役職で変更が無い場合が多いのです。
(従業員数、数十名~数百名の規模まで。社会保険労務士としてのアドバイスは行っていますが、なかなか…。)

定年前に非管理職で有った方については、雇用保険の高年齢雇用継続給付が支給される額までダウンさせることが多いです。40%カットの60%でしょうか、ただし継続給付で15%は支給されます。

「人材育成、技術や技能の伝承」をお願いするのですが、たいていの場合、その再雇用嘱託社員さんが最終的に退職する直前になって、後継者(次の担当者)について慌てられます。
▶ブログ:生産管理の次の担当者が決まらない←こちらでも似たようなことを書きました。

結果、現状は~

  • 職務の変更がある場合は、ほとんどない。
  • 再雇用後の賃金額は、部長クラスで80~100%、それ以外の方で60~70%程度にダウン。
  • 企業内労働組合があるところは、ほぼ無し。互助会組織がやたら強いところはありますが。

私が把握している限り、再雇用時にもめて、再雇用されなかったケースはほぼ皆無です。希望されないで、60歳での定年退職を選択するケースはあります。

何も対応せず、現状を是認する場合

60歳を過ぎての定年延長や定年廃止は考えられない企業では、

  • 現状の対応のままとする
    • リスクはありますが、訴訟に至るリスクの有無については、企業規模や労働組合の有無で判断してください
  • 役職定年制を設けて、ある一定年齢で役職手当をカットできるようにする
    • モチベーションが下がります。人材確保が難しい業種・職種ではなおさら
      • 60歳定年後は、80%以上を確保できるように設定

65歳まで雇用できる企業に於いては、

  • 定年を65歳まで延長する、ただし役職定年制を設ける
    • 役職定年を60歳に設定すれば、形としてはキレイになります。ただし、上記と同じく多少モチベーションに影響します
      (ただ、中小企業の役職手当って、教科書に記述されているより低額(低率)ですので、これもなかなか…。)
      • それなら、60歳定年制のまま、職務内容を変更すれば良いだけじゃないの?? と自問自答

今後は

世間では、「同一労働同一賃金」の裁判の判決で、再雇用嘱託社員の処遇を見直す風潮もありますが、中小企業では対応は遅いと感じます。

少し先になりますが、これによって見直す良い機会となることでしょう。

令和7年度から新たに60歳となる労働者への高年齢雇用継続給付の給付率を10%に縮小(令和7年4月1日施行)

本来は平成25年に廃止される予定でしたが、ゾンビのように生き残っています。今の61%ではなく、64%に設定して10%の給付率です。

その前に、第二種計画認定・変更申請はちゃんと認定を受けているかの確認もしてください。無期転換とならないように、念のためチェックしておきましょう。

あっ、来年令和4年度の年金大改正は60歳代前半の在職者にとっては、影響はありますが、企業側として賃金設定を変えられるほど大きくありません。下げると、労働条件の不利益変更になりますから。

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