賃金引き上げで注意するポイント

この4月、賃金の引き上げを実施する中小企業様も少なくありません。賃金アップをする企業の割合は、各種調査がありますので、そちらを検索していただくとして。

弊所・大阪社労士事務所のお客様から何件かご相談を受けましたので、備忘録がてらブログに書いておきます。なお、一般的な内容ではなく、お客様である企業様の状況をストレートに書いています。
(守秘義務の関係で、若干脚色しています。)

以下、「賃金を引き上げることで、何が起こるのか」を内容別に分けています。

「ベースアップと昇給は違うのか?」

弊所・大阪社労士事務所のお客様では、賃金表や昇給表を備えているところは多くはありません。感覚としては、従業員数が100名を境に「賃金表がある」企業が断然多くなります。

簡単に書くと、
●ベースアップ(ベア)とは、賃金表の書き換え
●昇給とは、賃金表の上の号俸に上がること
です。

賃金表がなければ、一般的にはベースアップはありません。ベア無しの昇給のみとなると考えていただくのが良いかと。賃金表が無しで昇給だけであれば、「一律の額や率、個人毎の査定」で、増額させることができます。これを昇給と言っているケースが多いと思います。

大阪社労士事務所・賃金引き上げで注意するポイント

退職金に注意

基本給をアップさせると、一番に気になるのが経営者側としては退職金でしょうか。

例えば、基本給30万円で2万円引き上げた場合、退職金が基本給連動型であり60歳定年退職時に30ヶ月分ならば、60万円退職金の額面が増えることになります。

「たった60万円で大騒ぎするの?」とは、働いている従業員・社員の側ならそう感じるでしょう。でも、従業員数が30名なら支払時期は違えど1800万円退職金として支払う額が増えるわけです。

そのため、昔は退職金額の急な上昇を防ぐために、基礎賃金(基本給)に含まない手当を別途作ったわけです。それが、第2基本給や調整手当と言われるもの。

このあたり、賃金規程・退職金規程の書き方次第ですが、まあ屁理屈のような手当等に昇給分を振り分ける訳です。

今回、ご相談いただいた顧問先様にはご提案をさせていただきました。昇給分が6%でも退職金の額を半分の3%増にする方法とか。テクニック次第でいろいろできます。労働条件の不利益変更になるため、ご注意ください。

賞与の月数

基本給をアップさせると、賞与の額が上がらなければ、支給月数は少しですが計算上は減ります。

基本給30万円で賞与の額が60万円なら、2ヶ月分の支給実績と書けます。が、上記のように32万円で賞与の額が変わらなければ、1.88ヶ月分の~となってしまいます。

賞与の額を賃金規程ではっきりと明示している企業様は少ないですが、「基本給1ヶ月分と実績配分」などと規定されていると話は変わります。実績配分額が結果として減るので注意が必要です。

中退共の積立金額が~

中退共の積立金額を基本給に連動している場合は、積立金額が変わる場合があります。

中退共利用の場合は、退職時には驚かないでしょうが、毎月の支払時には「忘れていた、基本給が上がると積立額も上がるのは」となります。

自動的に掛け金が変わるわけではないので、基本給の額と退職金規程、しっかり見ておきましょう。

当然、社会保険料も

基本給が2万円、3万円引き上げられれば、それに伴って社会保険料、とくに健康保険料・厚生年金保険料も上がります。この4月に引き上げたのであれば、今回の定時決定で1等級は上がります。
(随時改定は、一律3万円の引き上げ~とすると対象者がいることに。)

だいたい毎月の賃金総額の15,16%ですので、そのつもりで。

賃金表の書き換えだけでも

賃金表は、ただの数字の羅列ではなく、設計当初には必ず設計思想があります。

「一律1万円を引き上げたい」「目安30代後半40代に重点配分したい」「若手の20代30代前半に厚く配分したい」そうすると、本来はゼロから賃金表を設計し直す必要があります、本来は。単純に数字を足すだけでは設計思想が崩れます。

たまに「賃金表の書き換えだけでも」とご依頼のご相談をいただくのですが、○○万円と伝えると「賃金表を書き換えるだけで!?」。

設計思想を崩さないように書き換えるには、多少時間は掛かります。一律1万円2万円引き上げなら、時間は掛かりませんが。←一律○万円アップさせるだけなら、ご自身でできます。

パートタイマー

4月にアップさせたいところですが、業務改善助成金という助成金があります。

最低賃金の上がる9月末、10月頭とタイミングを合わせれば、負担感が少しは和らぐかも知れません。と書きつつ、省力化投資(設備投資)が必要ですので、全ての企業様に歓迎されるわけでもありません。

まあ、地域の最低賃金から貴社の社内最低賃金が30円以内なら、利用できる可能性があります。

賃金引き上げ分では済みません

退職金制度を備えている企業様では、おおざっぱに引き上げ額の1.3~1.4くらいの負担増となることを覚悟しましょう。

労働条件の不利益変更に当たるような変更をするのであれば、社会保険労務士なり、労働分野に明るい弁護士に相談するようお勧めします。

賃金引き上げで良いことですか。
やっぱり、定着率が良いことでしょうか。
人材確保・採用は、さすがに大企業ほどの買い手市場ではありませんが、正社員ならば応募は少なくありません。
(飲食、介護、建設、運送は、厳しいです。)

労務相談顧問
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大阪社労士事務所

【大阪社労士事務所は、就業規則・労務相談をメイン業務とする社会保険労務士事務所です。】

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