新しいツールの導入無しに年休を管理する方法

先日の弊所主催セミナーでも訊かれたのですが、最近ようやく「年次有給休暇5日以上取得義務化」のことが話題になり始めました。来春、平成31年4月以降に付与される方から順次対象になります。

まずは、今現在の年休保有日数を確認する

「何をいまさら」とお思いの企業様・ご担当者様も多いと思いますが、意外と把握していない企業様が存在するという印象です。

  • 3年ほど前からの勤怠データ・有休取得状況を準備する
  • 年次有給休暇管理簿(管理表)に現時点での年休保有日数を記入する
  • 今すぐ、管理簿(管理表)で管理する

管理簿の類いは、労働局がエクセルファイルで用意しています。
福井労働局
北海道労働局
島根労働局
(URLは、労働局の都合で変更される可能性があります。もし変更されている場合は「年休管理 労働局」「年休管理簿 エクセル」などで検索してください。)

大阪社労士事務所・新しいツールの導入無しに年休を管理する方法

年休を効率よく管理する

厚生労働省・モデル就業規則の年次有給休暇の項目を変更します。参考程度にお願いします。

年次有給休暇★年12回の斉一的取扱い
第22条 初回の年休付与日は、採用日から5か月を越えて勤続した直後の16日(基準日=賃金計算期間の初日)とする。採用日から6か月間継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、10日の年次有給休暇を与える。5か月を越え6か月に満たない期間は、その全期間出勤したものとみなす。その後基準日から1年間継続勤務するごとに、当該1年間において所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、下の表のとおり基準日からの勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。なお、○○年○○月○○日現在、年休付与日(基準日)が給与計算期間の初日でない労働者は、次回の付与日を付与日のある賃金計算期間の初日に繰り上げて変更する。

         基準日からの勤続期間
勤続期間 初回 1年 2年 3年 4年 5年 6年以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日
(週所定労働時間30時間以上または週所定労働日数5日以上の場合)

2 前項の規定にかかわらず、週所定労働時間30時間未満であり、かつ、週所定労働日数が4日以下(週以外の期間によって所定労働日数を定める労働者については年間所定労働日数が216日以下)の労働者に対しては、下の表のとおり所定労働日数及び基準日からの勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。初回の年休付与日の取扱いは、前項と同様とする。なお。なお、○○年○○月○○日現在、年休付与日(基準日)が給与計算期間の初日でない労働者は、次回の付与日を付与日のある賃金計算期間の初日に繰り上げて変更する。

                基準日からの勤続期間
勤続期間 所定労働日数 初回 1年 2年 3年 4年 5年 6年以上
4日 169日~216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121日~168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73日~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48日~72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日
(所定労働日数が算定しがたい場合は、実労働日数をもって所定労働日数に変える。)

※本来の表の部分は、表組みしていません。見にくいですが、ご了承ください。

「これって、いったい??」
はい、年休付与日を各月の賃金計算期間の初日に統一しました。即ち、年12回の斉一的取扱いです。賃金計算期間の初日、上記の例では毎月16日に採用すれば良いのですが、1日付採用も少なくないので。通達はあえて書きませんが、規定に織り込んでいます。

また、給与計算ソフトの年休管理機能を使っている企業様が少なくない状況から、賃金計算期間とリンクさせるのが、ベターかと思います。年1回の基準日を設けると、経営者様・社長様からの評価が芳しくないので、実務的にも年12回がまだマシです。

付与日から6か月経過後の取得日数もすぐに把握できるので、新たな年休管理ツールを有料で導入する必要はありません。
(と言っても、せいぜい2事業場、従業員数にして50名が、紙ベースでの管理の限界かもしれません。紙ベースの管理がリアルタイムでないという理由なら、クラウド系の勤怠管理ツールを導入するのが、ご希望に添います。)

パートタイマーの年休管理

飲食店のスタッフさん、訪問介護ヘルパーさんなどのような、「週◯日」と決めることのできないパート社員の年休は、初回(6か月うんぬん)は「実労働日数×2」を表に当てはめて、付与日数を決めます。次回以降も「実労働日数」で。規定にも、書いていますので参考に。

事務系のパートタイマーで、週4日などとハッキリしている場合は、実労働日数を使わないようにしてください。

賃金規程等に「年休取得時は、通常勤務した場合の賃金を支払う」とパート社員就業規則にも書いているケースが多いかと思いますが、採用時に「年休取得時に◯◯円支払う」と取り決めしておきましょう。「それが分からない」のであれば、多め・最長の時間数を通常勤務時の賃金にするのが、後々のトラブルを防止します。平均賃金での支払いは面倒すぎます。

取得日に関しては、シフト作成前などに「絶対に勤務を入れて欲しくない日」を年休取得予定日として申し出れるような制度にします。勤務表作成後に、突発的な年休取得が有ったとき(風邪、体調不良など)は、店長などの管理職や役員、ヘルプで対応するしかありません。

年休5日以上取得義務化に対応する

取得しやすい職場にするのが第一です。

事業主・会社が年次有給休暇の日を時季指定するのは、最終手段です。当該年度付与された年休から差し引きするのが法律の建前なので、ある意味企業様にとっては得なのですが。

過去にも何度か色々書いていますが、取りやすい状況にするには…

  • 仕事の属人化を防ぐ
  • 業務の標準化を進める、マニュアル作りも
  • 取得日数・取得率を人事評価項目に入れる(管理職など)
  • 半日年休制度の導入
  • 特別休暇(慶弔休暇)の年休取得日数による取得制限:不利益変更
  • 時効年休の積立制度
    年休を何かのとき、例えば病気になったときのために少しでも残したいというなら、この積立制度も効果的です。一般には、使用目的を限定させます。

計画的付与は、会社内で合意ができ、管理ができるのであれば有効です。最近耳にするのは、夏季休暇・お盆休暇や年末年始の休暇を計画的付与で年休に置き換えることですが、残業代単価に影響すること、労働条件の不利益変更になる可能性が高いことを考えると、即賛成はしません。今現在年次有給休暇の管理ができていない企業様では、おすすめできません。
(労務トラブルに直結、トラブルが外部に出てしまうかも。)

人材採用や定着率にも影響があることを考えると、と…。


大阪社労士事務所

【大阪社労士事務所は、就業規則・労務相談をメイン業務とする社会保険労務士事務所です。】

年次有給休暇の管理、有休の計画的付与制度の導入、働き方改革の支援、就業規則の変更・見直し、各種規程の策定も行っています。
労働条件自主点検表が送付された場合の対応もおまかせください。

ご相談・ご依頼は、ご遠慮なくどうぞ。

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不在時は、折り返しお電話させて頂きます。
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