年休を取りやすい職場にするためには
今月、ある会合で20歳代30歳代の方を対象に「働き方改革」をテーマにお話をさせていただきました。そこで、年休の確実な取得での話しの際に出てきたのが、コレです。
「上司は、年休を取れ取れと言うのだけれど…。」
弊所・大阪社労士事務所のお客様でも、「取れ取れ」という顧問先様は少ないのが現実です。
この20歳代30歳代の社員さんがお勤めしているのは、専門商社・卸売業としておきます。これ以上の情報を書いてしまうと、どこの何ていう企業様か分かってしまいそうなので、守秘義務の関係もあり、企業情報はココまでとさせていただきます。
厚生労働省の調査結果を見る
年次有給休暇の取得に関する調査・アンケートは、いろいろな団体が実施し公表しています。その中でも、全国規模かつ従業員数50人未満も(も、です)調査している厚生労働省の調査結果を引っ張ってきました。
リンクをクリックすれば、厚生労働省のサイトに飛びます。
▶過労死等防止対策に関する調査研究について
▶平成27年度過労死等に関する実態把握のための社会面の調査研究事業報告書
※平成28年度・29年度の調査もありますが、運送業、外食産業、IT産業、医療関係などで、全業種全般ということで27年度がベターかと。
雇用形態別(雇用区分)ごとでも調査していますが、私の備忘録を兼ねていますので、「全体」を採用します。
- 年次有給休暇の取得理由(上位5位まで)
体調不良のため 42.3%
自身の通院のため 19.1%
子どもの行事参加のため 12.6%
休養やレジャー、余暇のため 44.3%
趣味・稽古事のため 11.5%
複数回答ですので単純に合算すれば良いものではありませんが、主に「体調不良時のため」「余暇のため」というのが比重として大きいのが見えてきます。
- 年次有給休暇を取得しにくい理由(上位5位まで)
職場の同僚等に迷惑になるため 29.7%
仕事量が多く取得する余裕がないため 23.6%
休む間に引き継いでくれる人がいないため 20.0%
周囲の人が取得しておらず、取りにくいため 11.9%
上司が年休取得に対して消極的であるため 10.5%
特になし(取得しやすい) 35.6%
1/3(3分の1)の方々は「取得しやすい」を選んでいます。ですので、この項目を考慮すると、他の選択項目はだいたい2倍くらいで考えれば良いかと思います、乱暴ですが。
それぞれ対応策を考える
もちろん、厚生労働省の調査は各企業の事情を考えたものではなく、傾向としてとらえます。客観的な情報が、企業内であればそれに沿った対応策を考えます。
先ほどの厚生労働省の調査結果を一つ一つ潰していけば、理屈の上では「年休を取得しやすい職場」になります。
- 職場の同僚等に迷惑になるため 29.7%
仕事・業務の割り振りが、逆に上手くいっていることの証拠でしょうか。あるいは、最低限の員数で運用しているから? 業種・職種を限定せず全体での結果を見ていますので、決め付けできませんが。- シフト割りの最適化、員数の最適化
- 仕事量が多く取得する余裕がないため 23.6%
- 休む間に引き継いでくれる人がいないため 20.0%
コメントはしにくいのですが、皆さん、責任感を持って仕事や業務に当たっている証拠なのでしょうか。仕事の属人化傾向がみえますが、多くの中小企業で実感しています、実際に言われていますので。実効性を担保するなら、この項目をクリアにするのが、年休取得促進策の一番の近道に思えます。- チーム化、マニュアル化、多能工化、マネージメントの最適化
- 周囲の人が取得しておらず、取りにくいため 11.9%
取得すれば良いと思いますが、責任感から来るのでしょうか。背景に別の問題が潜んでいるようにも感じます。周囲の人も同様のことを考えているのなら、悪循環です。- 上司からの年休取得奨励
- 上司が年休取得に対して消極的であるため 10.5%
「年休を取ってね」だけで良いような気もしますが。年次有給休暇の取得=悪から善への意識改革が必要です。年休取得は、能率の向上につながるという調査結果もあるようです。- 上司・管理職層の意識改革、評価項目の設定改善
- 取得理由→体調不良のため 42.3%
実は取得しにくい理由に「病気や急用のために残しておきたいため 11.0%」が上位5位にランクインしています。図表を見て、突っ込んだ方もいたかも知れません。- 時効年休積立制度
2年の時効で無効となる年次有給休暇を、「病気」「急用」などの時に使えるようにする制度。
- 時効年休積立制度
- 取得理由→それら以外
取引先への連絡
冒頭の専門商社の社員さんから言われたのは、
「年休を出しても、携帯電話に掛かってくるし、メールも飛んでくるし。電話に出なかったり、メールに返信しないと、余計に…。」
とか。
「有休のはずやのに、全然休んだ気がしません。」とも。
まずは、取引先様には、会社側の一般的な情報として「対応についてのお願い」をお渡ししましょう。専門商社・卸売業なら、相手も企業・事業者でしょうから、多少はご理解いただけるのでは。
(お客様から「事情知らんねんなあ」と言われます。が、何もしないのではなく、会社側としてできる最低限のことはやっておきましょう。)
- 携帯電話から、弊社社員の対応が無い場合
→弊社「◯◯」までご連絡をお願いします。 - 電子メール・グループウエアの対応・返信等がない場合
→弊社「◯◯」までご連絡をお願いします。 - 「弊社は、働き方改革の実現に向けて、うんぬん」という理由も添えて
従業員・社員の側にも、会社側としては、お知らせや通達等します。
- 年休中は、携帯電話の電源を入れてはいけない(管理職除く)
「入れなくても良い」では、実効性に疑問符が付くので。年休日24時間ではなく、前日の終業後から年休明けの始業時までというように時間も決めておきます←決めないと、分からない。 - 年休中は、メール返信・グループウエアにログインできないようにサーバー等を設定する
私の知っている企業様は、出勤しない限り企業のオリジナルドメインを使ったメールも使えません。外部からの出勤ログインは、出勤したことになる設定です。
(どのように設定しているのか技術的なことは分かりません。が、実際に実施している企業様=IT企業ではない一般企業様なので。)
もちろん、普段からお取り引きのある取引先様なら、「不在時は私の上司の◯◯へ連絡をお願いします」旨、言いやすいのではないでしょうか。当たり前ですが、事務連絡文書としてお渡しすれば良いだけです。
年休は安心して取れる
改めて、冒頭の企業様は、専門商社・卸売業を営んでおられます。それ故、相手側も企業様・事業者様が多いでしょうから、ご理解いただける枠はあります。
労働集約型の小売業、飲食店、接客・娯楽業、医療・介護関係は、別のアプローチをする必要が出てきます。「人材不足が原因」なら、人材不足を解消する作戦も考えなければならないでしょう。
(書いてしまえば、社長様・事業主様が、決断するのか、なあなあで済ませてしまうのか。人材不足の本当の原因や、低処遇もどこにどんな原因があるのか…ちゃんと対応するのか。これが、書ける限界です。)
「年休を気兼ねなく取得することができる」は、職場のコミュニケーションが上手くいっている証拠です。「無遠慮に、勝手に年休を取得する」のとは、全く別物です。権利と言ってしまえば、それまでですが。今回お話しさせていただいた20歳代30歳代の方々は、皆さん控え目。
「社員の僕らが悩んでいるけど、上の人たち(たぶん、管理職)はどう思ってるんでしょうか?」
その悩みは、管理職なり経営幹部の方が悩み、情報を共有し、決断することだと言いたいのですが。私=社会保険労務士の桑野は、お金(報酬)を支払っていただく方の味方です。
書いておいたので、人事・管理部門の方へお伝えください。
▶労務相談顧問
▶人事労働コンプライアンス支援
大阪社労士事務所
【大阪社労士事務所は、就業規則・労務相談をメイン業務とする社会保険労務士事務所です。】
年次有給休暇の管理、有休の計画的付与制度の導入、働き方改革の支援、就業規則の変更・見直し、各種規程の策定も行っています。
労働条件自主点検表が送付された場合の対応もおまかせください。
ご相談・ご依頼は、ご遠慮なくどうぞ。
電話 06-6537-6024(平日9~18時)
不在時は、折り返しお電話させて頂きます。
または、「お問い合せ」フォームから。
サイバー法人台帳への登録・診断のお手伝い
サイバー法人台帳ROBINS by JIPDECさんへの企業情報掲載、ホワイト企業宣言を支援しています。当事務所には、確認者がいますので、企業情報の確認・経営労務診断に対応しています。
https://robins-cbr.jipdec.or.jp/
働き方改革の情報も、就業規則見直しセミナー
次回のセミナー開催は、8月5日です。セミナーだけでなく、個別相談の対応も行っています。働き方改革対応セミナーも、同日開催。
「働き方改革の実務対応セミナー」「就業規則見直しセミナー」の講師も承っております。
a:1203 t:1 y:0