固定残業代を活用する:研修会を受講して

【大阪社労士事務所は、人事労務の面から企業活動をサポートしています。】

先日社会保険労務士会の研修を受講しましたので、受講した内容を皆さまに活用していただけるよう掲載します。

固定残業代(金額固定の残業手当・定額残業代)の問題点は、次の3つです。
●残業の時間数と金額が一致していない場合
●長時間の残業を前提としている場合
●同一職種のうち一部の従業員にしか支払われていない場合

所定労働時間働いた場合の基本給と、所定労働外の時間外手当を区別しないで支払うのは、固定残業代以前の問題です。分けて支払うようにしましょう。すでに行政でも司法でも常識です。

以下、かなり個人的なコメントが入っていますので、お取扱いには十分ご注意ください。

残業の時間数と金額が一致していない場合

「労働基準監督署では、固定残業代・定額残業手当には時間数を書けと言われたよ。」
「是正勧告でも、時間数が必要と指摘された。」
「就業規則の本にも、そう書いている。」

確かに労働基準監督署・監督官・行政のレベルでは、そうです。
ただし、裁判所・司法の場では今日(2015年9月13日)現在、固定残業代には時間数を書けと言う最高裁判決は出ていません。

もっと身近に書くと、弁護士事務所から送付されてくる「未払い残業代払え」の内容証明郵便でも、裁判所・司法と同じような感じです。

例えば、月額給与から計算した基本の時間給が1000円、割増賃金が1250円の場合に、固定残業代を3万円、時間外の時間数を20時間とします。1250×20=25000円ですので、3万円を下回るので問題ありません。
では余りの5千円は?逆算で、3万円÷20時間=1500円を残業代の時間単価とする考えもあるそうです。このあたり、コワイですね。

私が就業規則に規定する場合は時間数を明記していませんが、今までまったく問題はありません。誤解されないように規定しているからです。労働基準監督署・監督官の調査でも、「こういう書き方なら」と固定残業代そのものを否定されるような前例はありません。

明日以降の将来において保証できるものではありませんが。

長時間の残業を前提としている場合

例の方が分かりやすいでしょう。

時間給1000円、月間所定労働時間160時間、月額基本給16万円で、固定残業代が1250円×100時間=12万5千円、月額給与の支払いが285,000円。労働基準法も労働安全衛生法も100時間という長時間労働を前提としたものではありませんし、法の趣旨に反します。それゆえ残業代うんぬん以前の問題が生じます。まあ、パッと見ても問題があるよなあと思う方が多いと思います。

健康配慮・安全配慮義務の問題が出てきます。
36協定限度時間の問題も・・・。

「いやいや現実は20時間しか時間外は無いんですよ。」
となれば、一つ目の固定残業代から逆算した残業代単価の問題もあります。
(研修会では出ていませんでしたが、「超えない部分は返還を求めない」等の規定で逃げたいですね。)

実態に合わない固定残業代、あまりに長時間労働を前提とした固定残業代はやはり労務管理上危険です。

同一職種のうち一部の従業員にしか支払われていない場合

こういう場合、固定残業代(固定残業手当)ではなく、能率手当・歩合給として取り扱われる可能性があります。特定の方だけに支給される手当はそのように判断されることもあります。

現実には、効率の悪い方ほど時間外労働が増える傾向にありますが、全く逆の手当の付け方ですね。

法定の休日労働・深夜労働の問題

固定残業代では、「法定休日の労働」「深夜勤務」の問題が出てきます。

法定休日なら最低35%増しです。
深夜なら、管理職を含め25%増しです。
「支払っていますか?」
「いえ、支払っていません。必要ですか?」
という問題に発展する可能性を含んでいます。

管理職(管理監督者)の深夜手当の問題はいつも出てきます。

固定残業代の問題解決のためには

少なくとも、就業規則に明記する。
労働条件通知書にも明記する。

就業規則、書きたくなくても「残業代見合いです」程度は書きましょう。当事務所で作成・見直し受託した就業規則には、そのような簡単な書き方はしませんが。
(ご要望がある場合は「残業代見合い」と書きますが、リスク有りです。)

この研修会では管理職(管理監督者)の問題は出てきませんでしたが、当事務所では予備的規定にて対応するようにしています。
※予備的規定は、大阪社労士事務所の造語です。

少しは参考にしていただけたでしょうか。
実際には、各企業様の実態に合わせた就業規則の規定、労働時間管理を行わなければ、「未払い残業代のリスク」はいつまでも追い掛けてきます。ご注意くださいませ。


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