IPO(新規株式公開)を考えている企業の3つのポイント
就業規則・労使協定
何はともあれ、就業規則と労使協定の整備が、基本になります。
上場審査でも、社内規程は非常に重要な位置づけになっており、担当の証券会社でもチェックは行われます。
単なるモデル規程の流用では、上場後使えない規則類となってしまうこともあるため、オリジナルかつ適法な就業規則を準備することが重要です。
社内の数名を就業規則を始めとする社内規程の作成・変更要員として、選任します。
外部の社会保険労務士や弁護士の就業規則に関する専門家を利用しない場合は、従前の就業規則からの変更が不利益変更とならないよう配慮したり、不利益変更の場合は労働契約法の規定を意識しながら、対応を考えます。
労使協定については、チェックができにくい書類ですが、少なくとも就業規則に記載されている協定については、必ず作成しておくことが求められます。
いわゆるベンチャー企業では、就業規則の運用についても、規定と一致するよう気を遣います。
人事労務・労働コンプライアンス
次は、人事労務・労働分野のコンプライアンス(法令順守)をチェックします。
法令違反では上場審査の前提になりません。
少なくとも、法律や業界基準は、クリアできていることがIPOには、必要です。
チェック項目は、概ね次の項目で良いでしょう。
- 就業規則を始めとする社内規程
- 社会保険・労働保険の実務
適用事業所・被保険者資格の取り扱いは、必須です。 - 労働基準法を始めとする労働法の義務順守状況
- 労働法の努力義務
- 労働法以外で、労働・人事労務の分野に関係する法律の順守状況
個人情報保護法・内部通報者保護法・自殺対策基本法・不正競争防止法などがあります。 - 人事労務の分野のプラスアルファの部分
一度に手を付けることはできませんが、着実に項目をつぶしていくことをおすすめします。
- 就業規則
- 労働基準法・安全衛生法
- その他の労働法の義務
- その他の労働法の努力義務
順番や優先度(プライオリティ)を付けることは本来できませんが、現実的なところ・緊急度の高いところから守っていくことが重要です。
労働CSR
CSRは、企業の社会的責任です。
最も分かりやすいのが、納税、事業の継続、雇用ですが、新規の株式公開を目指すのであれば、その次のステップとして何からのアクションを起こしては、いかがでしょうか。
「公開審査を通過することが先で、義務以外のところにまで手が回らない」
「利益を確保することが第一で、余裕が無いのが実情」
確かに、CSRに積極的に関与しても、直接の利益には貢献せず、むしろ利益を圧迫すると言われても仕方がありません。
ただし、上場時の売り出し価格や市場の評価は、CSRも含めて行われます。対外的なCSRは、重視される傾向がありますが、内部である労働分野のCSRは、軽視される傾向があります。
事業は、ヒトが、サービスを提供したり物品を販売したり、ヒトがカネ(金)を扱います。言わずもがな、ヒトが主役です。
従業員に優しい、従業員のことを考えた労働CSRは、従業員の採用・人材確保に貢献するだけでなく、市場の評価にも反映されるものと信じます。
時間外労働の削減・総労働時間の短縮や、ワーク・ライフバランスの諸制度から始めることは、社内的にも理解されやすく、取り組みやすいものです。
IPOの覚え書き
上場のメリット
- 事業面
- 企業イメージ・知名度の向上
- 社会的信用力の向上
- 人事面
- 人材確保が容易
- モラールアップ
- 社内の管理組織・体制整備の充実・強化
- 財務
- 資金調達の多様化
- 財務体質の強化
- 創業者
- 創業者利益の確保
- 担保価値の増大
- 株式の換金性
上場のデメリット
- 社会的責任(CSR)の増大
- 配当負担
- 上場基準維持のための財務上の制約
- 管理部門を中心に事務量・経費の増大
- インサイダー規制による株式売却の制約
- 株主総会対策
- 株価対策
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