CSRとは

CSR(Corporate Social Responsibility)とは、一般に「企業の社会的責任」を意味します。

具体的には、企業は社会的存在として、最低限の法令遵守や利益貢献といった責任を果たすだけではなく、市民や地域、社会の顕在的・潜在的な要請に応え、より高次の社会貢献や配慮、情報公開や対話を自主的に行うべきであるという考えのことをいいます。

先進国では社会が豊かになるに従い、経済的成長以外のさまざまな価値観が育まれ、企業評価の指標として、法律や制度で決められた範囲を超えて“よりよい行動”をすることを望ましいとする傾向が生まれています。

そこで企業がこうした社会的要請に応えることは、社会的行動の不足や欠落が招くリスクを回避するとともに、社会的評価や信頼性の向上を通じて経済的価値を高めることができると認識されるようになってきています。

CSR活動の実際

実際の活動内容はさまざまで、典型的なCSR活動としては

  • 地球環境への配慮
  • 適切な企業統治と情報開示
  • 誠実な消費者対応
  • 環境や個人情報保護
  • ボランティア活動支援などの社会貢献
  • 地域社会参加などの地域貢献
  • 安全や健康に配慮した職場環境と従業員支援

などがあります。
従来的な「関連法規の遵守やコンプライアンス」「よい製品・サービスの提供」「雇用創出・維持」「税金の納付」などを含める方向にあります。

その普及の直接的な要因としては、株式市場や格付機関が企業評価の尺度としてCSRの視点を取り入れるようになってきていることが挙げられます。
イギリス、フランス、ドイツなどでは年金の投資先評価の際に、環境・社会・倫理面の評価を法律で義務付けています。

CSRの視点を取り入れた投資のあり方を「社会的責任投資(SRI:socially responsible investment)」といいますが、環境対策や法令遵守、企業統治などを基準に投資先を選定した投資信託商品も発売されています。

我が国においては、企業や経済団体が主導的に活動しており、日本経団連「企業行動憲章」、経済同友会「自己評価ツール」などが提示されています。
日本規格協会には「CSR標準委員会」が設置され、ISO(国際標準化機構)の動きに対応した形で日本規格作りが進められています。

人事労務・労働の分野のCSR

人事部門で取り扱うCSRの領域は、差別問題やコンプライアンス(法令遵守)、セクシャルハラスメント、さらには過労死やサービス残業、労働搾取の問題といったように多岐にわたります。

例えば、人権に係わる差別問題やセクハラについては適切に対処することが企業に求められますし、仮に、適切に対処しなかったとすると、訴訟を起こされた場合には、訴訟にかかる費用や時間、損害賠償や和解費用といった直接的なダメージはもちろんのこと、風評により企業イメージやブランドイメージが低下することで受けるダメージは小さくありません。

また、コンプライアンスについて、企業は社会的責任を負う立場として、ただ単に法令を守っているだけではなく、法令等の趣旨や精神を理解するなど、企業倫理に基づく行動が求められます。

コンプライアンスの不徹底は、企業の不祥事や訴訟トラブルに発展する可能性があり、このような企業経営上のリスクを回避するためにマネジメントの一環としてコンプライアンスは認識されてきています。

このように、CSRは企業価値の向上・低下に大きく影響するものですし、リスクマネジメントの観点などからも、実効性のあるCSR体制を構築していくことが必要となっています。



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