意見書と労働者の過半数代表者
意見書とは
就業規則の作成・変更について、企業に従業員の代表者(従業員の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、それ以外の場合は、従業員の過半数を代表する者)の意見を聴かなければなりません。
この意見を聴くとは、就業規則の作成や変更についての同意を求めるものではなく、ただ、従業員側にどのような意見があるのかを聴くためのものです。
従業員側の意見を採用したり、反映したり、協議決定したりする必要はありません。
ただし、労働契約法上は、問題となる可能性がありますので、露骨な反対意見がある場合は、現実の問題として従業員に説明する、妥協点を見出す、変更修正を行うなどの対応を考える方が良いと思われます。
就業規則を労働基準監督署へ届け出るとき、従業員側の意見を記した書面を添付することになっています。これが意見書です。
意見書の内容が、就業規則の作成や変更に部分的に反対するものであっても、全面的に反対するものであっても、また、反対の理由がどういうものであっても届け出自体には問題ありません。
たとえ、意見書の提出を拒否されたとしても、意見を聴いたということを客観的に証明することができれば、受理されます。
一部の従業員に適用される就業規則
一部の従業員に適用される就業規則の意見聴取の相手方は
パートタイム就業規則のように一部の従業員にだけ適用される就業規則も、企業の就業規則の一部分です。
そのため、作成や変更の際の意見聴取は、企業の全従業員の過半数で組織する労働組合、または、全従業員の過半数を代表する者の意見を聴くことが必要です。
これにあわせて、その就業規則が適用される一部の従業員で組織する労働組合等の意見を聴くことが望ましいとされています。
一括届出の場合
会社が本社以外にも支社・支店・工場・店舗などの事業場がある場合、就業規則の作成や変更の意見を聴くのは事業場ごとに行いますが、それぞれの事業場ごとに従業員の過半数で組織する労働組合がある場合は、その労働組合本部の意見書を添付すればよいことになっています。
ただし、事業場数と同じ数の意見書を用意する必要があります。
派遣元事業場における意見聴取
派遣事業をしている企業の就業規則を作成や変更する場合も、従業員の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、ない場合には従業員の過半数を代表する者の意見を聴かなければなりません。
この従業員は、派遣元事業場のすべての従業員をいい、派遣中の従業員も含みます。
従業員の過半数代表者の選出
従業員の過半数で組織する労働組合がない場合には、従業員の過半数を代表する者を選出します。
選出のための要件として、次の事項を参考にしてください。
- 労働基準法第41条第2項に規定する監督または管理の地位にある者でないこと
管理職である従業員は、従業員代表としてはダメです。
- 就業規則の作成や変更の意見聴取等をする者を選出することを明らかにして実施される投票・挙手などの方法により選出された者であること
- 企業の意向により選出された者でないこと
投票や挙手以外の方法としては、話し合いや持ち回り決議等従業員の過半数が選任を支持していることが明確になる民主的な手続きであればどんな方法でも構いません。
候補者を決め、回覧により過半数の信任を得る方法や、部や課ごとに代表者を選出し事業場の従業員に認めてもらう方法もあります。
ただし、代表者を選出する方法として認められないものもあります。
たとえば、企業側(使用者側)が一方的に指名する方法、親睦会や友の会の代表者また一定の役職者などを自動的に従業員の代表者とする方法などは、認められません。
企業側が指名した従業員であっても、従業員の過半数の信任を得ることができれば、従業員の過半数代表者となれます。
従業員の代表となったこと、なろうとしたことを理由として解雇や給料の減額など不利益な取扱いをしてはいけません。
参考となる法令
労働基準法
(労働時間などに関する規程の適用除外)
第41条 この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
1.省略
2.事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
3.省略
(作成の手続)
第90条 使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
2 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。
労働基準法施行規則
第六条の二 法第十八条第二項 、法第二十四条第一項 ただし書、法第三十二条の二第一項 、法第三十二条の三 、法第三十二条の四第一項 及び第二項 、法第三十二条の五第一項 、法第三十四条第二項 ただし書、法第三十六条第一項 、第三項及び第四項、法第三十八条の二第二項 、法第三十八条の三第一項 、法第三十八条の四第二項第一号 、法第三十九条第五項 及び第六項 ただし書並びに法第九十条第一項 に規定する労働者の過半数を代表する者(以下この条において「過半数代表者」という。)は、次の各号のいずれにも該当する者とする。
労使協定の従業員側当事者、就業規則の意見書の従業員代表者に、全て共通の条件です。
一 法第四十一条第二号 に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。
二 法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること。
2 前項第一号に該当する者がいない事業場にあつては、法第十八条第二項 、法第二十四条第一項 ただし書、法第三十九条第五項 及び第六項 ただし書並びに法第九十条第一項 に規定する労働者の過半数を代表する者は、前項第二号に該当する者とする。
3 使用者は、労働者が過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしないようにしなければならない。
過半数代表者(則第6条の2、則第25条の2第2項及び則第67条第2項並びに労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法施行規則第1条関係)一部抜粋
1 趣旨
過半数代表者の要件を明確にしてその選出方法及び職制上の地位等を適正なものとし、併せて過半数代表者の不利益取扱いをしないようにしなければならないこととしたものであること。
2 過半数代表者の要件
次のいずれの要件も満たすものであること。
(1)法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。
(2)法に基づく労使協定の締結当事者、就業規則の作成・変更の際に使用者から意見を聴取される者等を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であり、使用者の意向によって選出された者ではないこと。
3 過半数代表者の不利益取扱い
過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として、解雇、賃金の減額、降格等労働条件について不利益取扱いをしないようにしなければならないこととしたものであること。
「過半数代表者として正当な行為」には、法に基づく労使協定の締結の拒否、1年単位の変形労働時間制の労働日ごとの労働時間についての不同意等も含まれるものであること。
(平成11年1月29日 基発45号)
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