就業規則作成のポイント

最初が肝心、就業規則

会社において一番最初の就業規則は、重要です。今後の、運用や見直しの際のベースになるからです。

とは言っても、「職場慣行」も程度・内容によっては規則の一部とされますので、現状を盛り込んだものが就業規則になります。人事・労務管理について今までと全くやり方を変えたり、新たな義務や条件を課すことは「不利益変更」の問題が生じることがあります。

  • 従業員が少ないときに就業規則の外枠を固めておく
  • 普段から「なあなあ」ではなく、「ルールに則る」を忘れない
  • 職場慣行のうち、不必要、余計なものは早めに見直す

そうしたうえで、初めての就業規則を作ることをおすすめします。

モデル規程を探す使う

全くのゼロから作るのは、非現実的ですので、モデル規程を利用します。

インターネットのホームページで、「モデル就業規則」で検索すれば、非常に多くの件数が出てきます。マイクロソフトのワードをお使いであれば、「就業規則 doc」あたりで検索すれば、ワードファイルで探すことができます。

ただ、ネットのモデル規程は、何時の時点で作成された就業規則か分からない場合、作成時点を記載していない場合がほとんどなので、あまりおすすめはできません。

書籍で、モデル就業規則を探す方が安全です。多少のお金(2000円前後)はかかりますが、解説・説明もされています。
探すポイントは、次のとおりです。

  • CD−ROM付き、またはホームページからダウンロードできる
  • 出版年月日は、その年度

規則類を自分で入力していれば、非常に時間が掛かります。CD−ROMに就業規則を始め、関係する規程が収録されているのであれば、時間と手間が省けます。36協定や他の労使協定も収録されている場合がほとんどです。

出版年月日は、労働基準法を始めとする労働関係の法律の改正が頻繁に行われるので、極力新しい、年度内(4月から翌年の3月)までが良いでしょう。

手にとって、これなら良いなあと思う書籍を購入します。

手を加えるのは、この3つ

初めての就業規則では、次の項目を重点的に確認されることを強くおすすめします。

  1. 労働時間
    労働時間は、1日8時間、1週40時間。週に1日、4週に4日の休日。
     
    お客様の実情・実態を、労働時間と休日の項に手を入れるわけですが、完全週休2日制でない限りは、すぐに書けないかも知れません。シフト制の場合は、シフト制であることを明記しましょう。
     
    労働基準監督署に問い合わせれば、丁寧・親切に教えていただけます。余計な心配は要りません。解説のリーフやパンフもあります。
     
    それか、社会保険労務士がやっている就業規則の無料診断を利用するのも方法です。無料相談も、やってみる価値ありです。
     
  2. 服務規律
    分からなければ、そのままで構いません。
     
    創業して間が無い場合や、過去に労使トラブルがなかった場合は、モデル就業規則そのままで、修正や追加はおすすめしません。業種や職種により、「こうして欲しい」ことがあれば追加します。
     
    従業員に注文がある場合は、法律や倫理に触れないよう、規定を書き加えます。
     
    労働基準監督署の窓口では、服務規律までチェックされないと思いますが、実際の運用で問題となる場合がありますので、自信がないときは、モデル規程のままがベターです。
     
  3. 賃金
    賃金だけは、モデル規程をそのまま使えません。
     
    基本給は良いとしても、手当を出している場合は、それぞれ支給条件を客観的に書きます。「各人ごとに決める」でも、構いませんが…。
     
    現状の賃金・給与を賃金規程に盛り込むことが基本です。モデル規程の内容に合わせることは、不可能ではありませんが、おすすめはできません。
     
  • 役職手当(管理職手当)
  • 皆勤手当
  • 通勤手当
     
    この程度は、どのモデル規程にも、支給条件が書かれています。
    営業職に「営業手当」を支給しているときは、書籍を購入する段階で、記載があるものを買いましょう。

その他

育児・介護休業や、育児時間、子の看護休暇を削除するのは、やめましょう。削除しても法令が適用されますが、是非が分からなければ手を付けないのが無難です。厚生労働省の育児介護休業等規程がベースになっているはずですので、触らない方が良いかも知れません。提出は必要です。

書籍の解説には、「義務」と書かれています。

ほとんどのモデル規程は、法律で義務付けられていることが記載されていますが、最低限のことしか書かれていませんので、むやみに削除することは良くありません。

「休職」「慶弔休暇」は、法定ではありませんので、削除しても構いません。バッサリと無くしても良いかも知れません。

労働時間・休日と賃金を、解説・説明を見ながら、もう一度内容をチェックしてみます。
自信がなければ、社会保険労務士事務所がやっている「就業規則の無料診断」や労働基準監督署を利用しましょう。

提出まで、もう一息

  1. 意見書を書いてもらう
    従業員の代表者に、就業規則の案に対する意見を書いてもらいます。
     
    選挙や信任などの手段で、従業員の過半数のOKを受けた方を労働者代表として、決めるのです。民主的に決めてください。「経営者が指名」だけでは民主的とされないでしょう。
     
    その従業員に、就業規則の案を見せて、何か意見を書くようお願いします。
     
    白紙はいけません。何も意見がないときは、「ない」旨を書いてもらえば、結構です。個人的な意見、例えば「給料が安い」は良くない意見の代表格です。
     
  2. 労働基準監督署へ提出
    事業場(企業)管轄の労働基準監督署へ、届け書+意見書+就業規則類を2部、この順番でステープラー(ホッチキス)などで綴じて、持参します。
    郵送も可能ですが、折角の機会ですので、行ってみましょう。
     
    「就業規則の届け出」の表示がされている部署を訪ねます。
     
    2部提出すると、中身をチェックされます。
    担当官にとって不明な点があれば、質問されます。
     
    受付印が押され、1部が返されます。提出は、完了しました。
     
    受付印が押されずに返されることがあります。法律的におかしい点が有ったからです。
    「どこが問題か」そこを修正・変更・削除して、再度提出します。
    (行政手続法では、形式が整っていれば、届け出書類は受け付けられますが、窓口指導が行われている場合があります。)
     
  3. 就業規則の飾り方
    就業規則は、周知しなければ、効力がありません。
    「従業員の皆さまに、十分に知っていただく」ことが就業規則の重要なポイントです。
     
    就業規則は隠さずに、常時見ることのできる場所に掲示します。従業員毎にコピーを配布しても構いません。
     
    労働関係の法律は、最近は毎年変更・改正などがあります。
    一度作ったから、ずっと使えるのが就業規則ではありません。
    たまには、中身のチェックをしておきましょう。



a:9516 t:4 y:1