「ブラジルの労働法」は、研究テーマですので、この内容をもとにブラジルの労働法について行動、判断することはおすすめできません。作成時期2008年
ブラジルの労働法概要
ブラジルの労働法は、普通、統一労働法と訳されている。
正確に言えば、労働法集成とも言うべきもので、新しく法典として編纂されたものではなく、主として1930年代から40年代始めに制定された労働者保護法規をひとつの法律にまとめたものである。
また、この法律は、大統領の命令として交付された。労働法が、大統領の命令がそのまま、法律の効力を有するという特異な形で制定されたのはそのためである。もともと個別法規の集成であるから、その結果として、ブラジルの労働法は、新しい社会の動き、政治的勢力にきわめて柔軟に対処できることになった。
つまり、機械の部品を取り替えるように、新しい政治理念や、経済の進展に合わせて、一部分を除去あるいはこれに修正を施せば、法律全部の改廃をおこなわなくても済むこととなったのである。
軽度の改正は常に行われており、時には、数十条に及ぶことがある。統一労働法が、ゼッツリオ・ヴァルガスの独裁時代、その後の民主化の時代、1960年代の左翼勢力の伸長、軍政時代、再民主化の時代を生き永らえたのはそのためである。
この法律は、家父長的ではあるが、進歩的側面と保守的性格の両面を持っていた。
ブラジル労働法の基本原則
- 労働法の目的は力において劣る労働者を保護するものであるという原則で、以下のものが、その原則を敷延したものである。
- 「疑わしきは労働者の利益に」の原則
法律の適用に当たって疑義が生じるときは、労働者の利益になる解決が優先される。 - 労働者有利の条件尊重の原則
例えば、新法によっても、労働者に有利な既得権は揺るがない。 - 法律のヒエラルキー無視の原則
異なる規範に別個の規定がある場合、労働者に有利な規範を適用する。憲法で保証されている年間30日の有給休暇の規定と異なり、労働協約で45日間の有給休暇を定めればこの協約が優先する。 - 法文の解釈における労働者の利益優先の原則
法律の規定が明確さを欠く場合、労働者に有利に解釈する。
- 「疑わしきは労働者の利益に」の原則
- 労働者の権利無効放棄の原則
法律に明示の例外規定があるときを除き、労働契約における権利の放棄は無効であるという原則。- 事実優先の原則
例えば労働手帳(労働契約)に最低賃金を記入しても、事実として、これを超える賃金を支払っていれば、この事実が優先する。 - 雇用関係継続の原則
特に反対の証拠がない限り、労働契約は、期限をさだめず契約したものと推定する。
以上の原則は今も守られており、労働訴訟においても、労働者側に有利に展開する場合が多い。
- 事実優先の原則
- 個別労働契約
個別労働契約は、一方を自然人たる労働者、他方を使用者とする契約で、労働者が、従属、非臨時的労働を供与し、使用者が賃金を支払うことを約する契約である。不要式契約であり、明示であるか、黙示であるかを問わないが、実際は、労働・社会保障手帳の記入が義務づけられているので明示の要式の契約であることが強制されている。
労働契約の期限は、原則として、期限の定めのない契約であるとされている。定期契約である場合は、立証が必要で、以下の場合に限られる。 - 業務の性格とその臨時性によりあらかじめ期限を定めることが正当化されるとき。
- 企業の事業が一時的なものであるとき。
- 試用契約(期間は90日)。
これ以外の定期契約は無効とされる。また、期限前の正当理由を有しない解雇は、全期間に支払うべき報酬の半分を労働者に支払わなくてはならない。
ブラジル労働法まとめ
ブラジルの労働問題・労使関係を規制する基本法は、1943年5月1日施行という古い統合労働法で、1940年代までの散在する労働法をまとめたものであり、従属労働の提供を包括的に規制するために制定された法典ではないとされている。
統合労働法は、労働者を無防備な経済的弱者とみなし、使用者を搾取主体と見る資本と労働間の経済力は非対称であるという認識から、保護主義的傾向が強いもので、労働者保護は特に過剰であると指摘されている。このため、産業社会の変化などに従来のモデルで
は現実的に対応できなくなってきており、早急な改革が必要になってきているといわれている。
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