「定年後再雇用は、なぜ1年間の有期契約なのか?」
お客様の庶務担当者からいただいた質問です。
「60歳で定年後、再雇用時には、なぜ1年更新の契約社員(有期契約)なんでしょうか?」
来年定年を迎える従業員からの質問で、直ぐにでも答えが欲しいということです。面前でしたので、アレコレ調べる余裕はありませんでした。
当方の回答としては(当然、お金をいただいている企業側の立場で)
●60歳になると、働きたい方、田舎に帰りたい方、体調に差があり、気持ちにも差があるので、1年更新にしている(まとめすぎ?)
庶務担当者さんは、定年予定者からいくつか指摘を受けているらしい。
- 1年ごとに契約更新するのでなく、可能なら5年とかの契約にできないのか。
- 契約更新時に余計なリソースを割いているのではないか。
- なんなら、60歳定年でなく、法律が求めているなら65歳定年でも良くないか。
良いところを突いています。が、庶務担さんは、会社に戻って説明しなければならないので、顔は必死の形相です。(スミマセン)
●60歳以上であれば、5年契約も可能だけれど、先にもお伝えしたように「従業員の希望・気持ち」の変化があっても良いように、1年更新にしている←会社側の立場での回答です。

●リソースを割いている件=正社員でも評価面接の際に時間を取っているので、再雇用の嘱託社員になったとて同じである(はずですよね?)。体調や生活環境の変化を確認するためにも、有効である(はずです)。
●65歳定年にすると、60歳定年で人生の選択を考えていた従業員が困るのではないか。希望すれば、65歳まで継続雇用される。今のところ、65歳に定年を延長する予定はない(と、人事・管理部門担当の役員が雑談していましたよね?)。
(60歳定年、65歳で第2定年とする方法もありますが、この場では出ませんでした。雇用保険の受給で、期間満了でないことで差は出ますが、今は1ヵ月ですから。)
会社側の立場での回答と言うことで、余計なことは言えません。庶務担さんも同じ気持ちだと思いますが、最後に「個人的な質問ですが、デメリットはないのでしょうか。桑野さんの話を聴くと、1年契約の方が良いように思ってしまいます」とのこと。
「直ぐに定年予定者に説明します。今日話さないと、明日になったら忘れてしまいそうです」と、質問は終わりました。
後日伺うと「再雇用を希望して、嘱託社員として現状65歳まで働きたい」らしいです。
AIにも訊いてみました
事務所に戻ってから、ChatGPTに同じ内容で質問を投げました。それぞれ、クリックして内容をご確認ください。
定年後の再雇用が「1年間の有期契約」となるケースが多いのは、以下のような法的・実務的な理由があります。
1. 高年齢者雇用安定法との関係
企業には、65歳までの雇用確保義務(継続雇用制度や定年延長など)が課されています。ただし、法律は「定年後は無期雇用にしなさい」とまでは求めていません。そこで多くの企業は、毎年更新型の有期雇用を選ぶことで、法的義務を満たしつつ柔軟な運用をしています。
2. 就労能力・健康状態の確認
定年後は体力・健康面に個人差が大きくなります。1年ごとに契約更新とすることで、勤務状況・健康状態・職務遂行能力を定期的に確認できる仕組みにしています。
3. 人件費・処遇の見直し
定年前と同じ処遇を維持すると企業の負担が大きい。有期契約とすることで、給与・手当・勤務時間を毎年見直しやすくなる。組織改編や業務量の変化にも対応しやすい。
4. 法的リスクの回避
無期契約にすると解雇が難しくなり、経営上の人員調整が困難になる。有期であれば、契約期間の満了を理由に自然に終了でき、労務トラブルを避けやすい。
5. 実務慣行(判例・労働行政の指導)
判例や厚労省の運用上も「再雇用は有期契約でよい」とされてきた。特に 1年更新は賞与や評価制度と連動させやすく、事務処理上も合理的。
✅ まとめると
「法的義務は65歳まで雇用を確保することだが、企業としては健康・能力・人件費を毎年見直したい。そこで、最も扱いやすい『1年ごとの有期契約』が慣行的に採用されている」――というのが大きな理由です。
労働者側から見た「定年後の再雇用が1年有期契約になることのデメリット・留意点」を整理します。
労働者側のデメリット・留意点
1. 雇用の安定性が低い
定年前は「無期雇用」が基本で、解雇は厳しい制限がありました。定年後は「契約満了=雇止め」で終了できるため、翌年の雇用が保証されない。実際には更新されるケースが多いですが、不安定さは否めません。
2. 処遇(給与・手当)の低下
定年後再雇用は「賃金が大幅に下がる」ケースが多いです。
- 管理職から非管理職へ降格
- 賞与が減額・廃止
- 役職手当・家族手当などが消える
有期契約であるため、処遇改善の交渉余地が小さいことが多いです。
3. キャリア形成の見通しが立てにくい
「あと何年働けるか」が曖昧。資格取得やスキル活用など、長期的なキャリア投資をしにくい。
4. 社会保険・年金との関係
再雇用後も 厚生年金・健康保険に加入するが、給与水準によっては 在職老齢年金の支給停止が発生する。更新が1年ごとだと、保険・年金の見通しも立てづらい。
5. 精神的なプレッシャー
「来年更新されるかどうか」への不安。職場での立場が弱くなり、言いたいことを言いにくい。長年の経験や知識を活かしにくくなる場合もある。
労働者側にとってのメリット(補足)
短期間の契約なので、働き方を柔軟に調整しやすい。健康・家庭状況に応じて「更新しない」という選択もしやすい。企業によっては、再雇用後も比較的安定的に更新される例も多い(実質的に65歳まで雇用継続)。
✅ まとめると
定年後の「1年更新の有期契約」は、企業にとっては管理しやすい仕組みですが、労働者側から見ると「雇用・処遇の安定性が弱い」点が最大のデメリットです。一方で、働き方や生活設計に合わせて調整しやすいというメリットもあり、労使の利害調整の結果として定着している形といえます。
ここまででまとめておきます。
- 企業側の理由
- 高年齢者雇用安定法で義務付けられるのは「65歳までの雇用確保」であり、無期雇用までは求められていない
- 健康・能力・人件費を毎年見直したい
- 契約満了により自然に終了できるため、法的リスクを回避できる
- 1年更新は賞与や評価制度との整合性がとりやすい
- 労働者側の留意点
- 雇用の安定性が低く、翌年の継続は保証されない
- 処遇(給与・手当)が大幅に下がることが多い
- キャリア形成や生活設計が立てにくい
- 社会保険・年金との関係で不利益が生じることもある
- 精神的な不安・立場の弱さ
つまり、企業の柔軟性とリスク回避と、労働者の安定性低下がトレードオフになっており、その妥協点として「1年更新型の有期契約」が広く定着している、という構図です。
Youtube動画でも、どうぞ。
https://youtu.be/XXDrlFBrwac
※守秘義務の関係で、いろいろと脚色しています。
大阪社労士事務所
【大阪社労士事務所は、就業規則・労務相談をメイン業務とする社会保険労務士事務所です。】
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