新入社員をつなぎとめる労務管理上の取り組み202506
新入社員の早期退職を防ぐための労務管理上の取り組み
―社会保険労務士の視点から―
近年、多くの企業で新入社員の早期離職が問題となっている。厚生労働省の調査によれば、大学卒業後3年以内の離職率は約3割に達しており、中小企業に至ってはさらに高い傾向が見られる。このような状況は、企業の人的資源への投資が回収されないという損失に加え、組織の活力や職場の雰囲気にも悪影響を及ぼすため、重大な経営課題として捉える必要がある。
社会保険労務士は、労務管理の専門家として、従業員の定着を促す施策を助言・支援する立場にある。以下では、早期退職の背景を整理した上で、具体的な労務管理上の取り組みについて考察する。
1.早期退職の主な要因
新入社員が早期に離職する理由は多岐にわたるが、以下のような傾向がある。
職場環境や人間関係への不適応
配属された部署での上司・同僚との関係や、業務の進め方に違和感を覚え、心理的安全性が確保されていない場合、退職の動機となる。
仕事へのミスマッチ感
採用時の説明と実際の業務内容が大きく異なる、または自身の能力を発揮できないと感じた場合、職場に居続ける意義を見いだせなくなる。
成長実感の欠如や将来性への不安
研修やOJTが不十分で、スキルの習得ができないと、自信を喪失しやすく、将来への希望が持てない。
過重なストレス・労働時間
入社早々から長時間労働や高いプレッシャーがかかると、心身に不調をきたし、離職に至る可能性がある。
2.労務管理上の具体的取り組み
これらの要因に対応するには、制度的・運用的な観点から、以下のような取り組みが重要である。
(1)リアリティショックを防ぐ採用・配属プロセスの見直し
入社後のギャップを減らすためには、採用段階から企業側が「本当の姿」を誠実に伝える努力が必要だ。仕事内容や職場環境、求められる能力について正確な情報提供を行うとともに、説明会やインターンシップ、現場社員との交流などを通じて、学生が企業文化や実務を実感できる機会を増やすべきである。
また、配属の際には、適性検査や面談などの結果を踏まえて、本人の性格や志向と業務内容が合致するよう配慮することが重要だ。ミスマッチは早期離職の大きな要因であり、「適所適材」の視点が求められる。
(2)入社初期のフォロー体制の強化
入社後1〜2年間は、新入社員が会社に適応するうえで最も重要な期間である。メンター制度やブラザー・シスター制度を活用し、年齢の近い先輩社員が業務面・精神面の双方から支援する体制を整えることで、孤立を防ぎ、安心して成長できる環境が生まれる。
また、定期的な1on1面談やキャリア面談を実施することで、悩みや不安を早期に把握し、必要に応じて配置転換や業務調整などの柔軟な対応が可能になる。
(3)教育訓練の充実とキャリア形成支援
「学べる環境」は若年層にとって重要なモチベーション源である。新入社員に対しては、単なる業務マニュアルの伝達にとどまらず、「なぜその業務が重要なのか」「自分の仕事がどう会社に貢献しているか」といった意義を伝える教育が必要だ。
さらに、将来のキャリアパスを描けるような制度設計が求められる。例えば、「ジョブローテーション制度」や「社内公募制度」などを導入し、多様な経験を積ませることで、将来的な成長の可能性を提示することができる。
(4)労働時間の適正化とメンタルヘルス対策
長時間労働は、新入社員にとって大きな負担となり、離職の引き金にもなりやすい。36協定の遵守や、業務の見直し・ITの活用などにより、業務効率を高めて所定労働時間内で業務が完結するようにすることが必要である。
また、メンタルヘルス対策としては、産業医・保健師との連携や、ストレスチェック制度の活用、EAP(従業員支援プログラム)の導入などにより、早期発見・早期対応を可能にする体制を整備すべきである。
3.制度運用における社労士の役割
社会保険労務士は、労務制度の設計や就業規則の整備、各種相談対応において、企業の人的資源管理を支援する専門職である。早期退職防止という課題に対しても、次のような貢献が可能である。
就業規則の整備
試用期間の運用ルール、メンター制度の明文化、キャリア支援制度など、制度的な裏付けを整える。
助成金活用の提案
人材育成や定着支援に関する助成金(例:人材開発支援助成金、若者雇用促進等)を活用し、企業の取り組みを経済的に支援する。
労務監査による現状把握と改善提案
離職率や定着率、労働時間、休職・復職状況などを把握し、改善点を可視化する。
従業員面談や第三者相談窓口の設置支援
社内で言い出しづらい悩みを拾い上げるために、社労士が外部カウンセラー的な役割を果たすこともできる。
4.終わりに
新入社員の早期退職は、本人にとっても企業にとっても不幸な結果である。しかし、原因の多くは防ぎうるものであり、企業が誠実に人材育成と職場環境整備に取り組むことで、若者の定着率は確実に向上する。
社会保険労務士としては、制度・実務の両面から企業を支援し、「働きがいのある職場」の実現を後押しする責務を果たしていきたい。
リアリティショックへの対策
―新入社員が“現実”と向き合い、職場に定着するために―
リアリティショックとは、新入社員が入社後、理想と現実のギャップに直面し、強い失望や戸惑い、場合によっては無力感を感じる現象を指します。多くは「思っていた仕事と違う」「職場の雰囲気が合わない」「やりがいを感じられない」といった体験が引き金になり、早期退職に繋がります。これは特に若年層の就労経験の浅さと、企業側の情報発信不足が交差して起きる問題です。
社会保険労務士としては、次のような予防的・実務的な対策を提案できます。
1.採用段階からのギャップ対策
①仕事内容・職場環境の「ありのまま」を伝える
・採用時の説明や会社案内で、魅力ばかりを強調せず、「実際の業務の忙しさ」「人間関係のリアル」なども説明する。
・例:現場社員との座談会、業務シミュレーション体験、インターンシップの充実。
②応募者に自己理解を促す
・企業側が応募者に「あなたはどういう仕事スタイルが合うと思いますか?」「どういう職場で力を発揮できそうですか?」と問いかける。
・適性検査(例:SPI、エニアグラム、性格診断)を使ってマッチ度を見極める。
2.入社後の支援体制づくり
①メンター制度・OJTの活用
・年齢の近い先輩社員が定期的に声をかけることで、心理的安全性を確保。
・メンターが「職場の文化」や「社内の暗黙知」を翻訳して伝える役割を果たす。
②定期的なフォロー面談の実施
・配属後、1週間・1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月と節目で人事や上司が個別にヒアリングを行う。
・「不満や違和感を吐き出せる場」として、早期の軌道修正を可能にする。
3.ギャップへの「解釈支援」
①「なぜこの仕事が必要か」を説明する
・事務作業や雑務など「意味が見えづらい仕事」ほど、その意義を丁寧に伝える。
・例:「顧客との信頼関係を築くにはこの作業が不可欠」など。
②振り返り・成長実感を促す
・日報や週報で「できるようになったこと」「感じたこと」を記録させる。
・面談時に上司がフィードバックを行い、成長を実感させる。
4.制度設計・就業規則への反映
社会保険労務士としては、リアリティショックに対応する仕組みを制度化することも役割の一つです。
・試用期間中の職場変更制度
一定期間内での部署変更やOJT先変更を可能にする制度を設け、本人と職場の両方に“相性の合う機会”を提供する。
・研修後アンケート・フォロー制度
研修終了後の満足度や不安の聞き取りを制度化し、実務配属までの不安を可視化・解消。
・定着支援の助成金活用
「人材開発支援助成金」などを使い、育成や職場適応の体制構築を支援。
おわりに
リアリティショックは“甘え”ではなく、“情報と支援の不均衡”から生じるものであり、企業が適切なアプローチを行えば、多くは予防可能です。採用から初期配属、定期面談、制度設計まで、段階ごとの対策を講じることで、有望な人材の定着率は大きく向上します。
社会保険労務士は、企業と社員の中間に立つ立場から、リアリティショックを「見える化」し、その克服を支援することができる専門職です。
実は…
このブログの背景が黄色部分は、生成AIの一つである「ChatGPT」にて書かせました。メッセージ(プロンプト)の書き方によっては、このブログ記事と違った内容が排出されるかも知れません。書かせたのは、令和7年6月11日(水)午前9時ごろですので、同じ内容を送信しても、全く同じになるとは限りません。
また、同じタイトルで▶2024年08月03日に同じ事を行っています。ですが、出力された内容は違いますねえ。今回の方がカタカナ語が減っています。そして、より実践実行しやすい内容になっている気がします。
リアリティショック、今までなら理想(入社前)と現実(入社後)のギャップなんて表現していました。
法律や法令の内容に関しては、ChatGPTはまだまだですが、前回も書いたかもしれませんが、このような内容であれば生成AIが出した答えを一つは実行されても良いのではないでしょうか。
いっぺんやってみましょか。
(毎月ITC京都のAIに関する勉強会に参加しています。が、テキスト系の生成AIよりも、動画や音声、スライドなどのビジネスに即使えるような内容が多いです。)
大阪社労士事務所
【大阪社労士事務所は、就業規則・労務相談をメイン業務とする社会保険労務士事務所です。】
年次有給休暇の管理、有休の計画的付与制度の導入、働き方改革の支援、就業規則の変更・見直し、各種規程の策定も行っています。
労働条件自主点検表が送付された場合の対応もおまかせください。
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(社会保険労務士は、企業の経営労務監査を実施します。M&Aデューデリ、事業承継デューデリにも対応。)
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