所得税の課税最低ラインが160万円になった場合
いわゆる「103万円の壁」が、「160万円の壁」になろうとしています。企業内では、給与計算時だけ気を付ければ良いことなのでしょうか。少し検討してみました。
家族手当・扶養手当
家族手当の支給対象者の基準が、所得税うんぬんとなっている場合は、今後給与所得160万円以下までを家族手当の対象とするのかの検討が必要です。
(大企業や「年収の壁」対応をされた企業では、配偶者への家族手当・扶養手当の類いを廃止または削減しているところが多いかと。ただ、中小零細企業では家族手当等に手を付けていないところも多いでしょうから。)
「健康保険の被扶養者」を家族手当の対象者とする場合は、後期高齢者医療制度の対象者が健康保険の被扶養者ではないため、注意が必要です。規定は、「年収規定+75歳・一定の場合は65歳以上」とするのが適当でしょうか。
健康保険の扶養認定
現時点では、「収入に関する証明の添付が省略されている者は、所得税法上の控除対象配偶者・扶養親族であることを確認しました。」の「確認しました」に○を付ければ、収入に関する証明は事実上不要でした。
届け書の裏面に所得に関する証明書の記載があります。
ア.退職したことにより収入要件を満たす場合
退職証明書または雇用保険被保険者離職票の写し
イ.雇用保険失業給付受給中の場合または雇用保険失業給付の受給終了により収入要件を満たす場合
雇用保険受給資格者証または雇用保険受給資格通知の写し
ウ.年金受給中の場合
現在の年金受取額がわかる年金額の改定通知書などの写し
エ.自営(農業等含む)による収入、不動産収入等がある場合※
直近の確定申告書の写し
※自営業者についての収入額は、当該事業遂行のための必要経費を控除した額となります。
オ.上記イ~エ以外に他の収入がある場合
上記イ~エに応じた書類、課税(非課税)証明書
カ.上記ア~オ以外
課税(非課税)証明書
ここがどうなるのでしょうか。「160万円」になってしまうと、130万円を超えてしまってるので、原則・収入の証明書が必要になれば、結構大変です。
社会保険加入(特定適用事業所以外)
160万円になることで、どのくらいの時間数を働くことが出来るのか改めてチェックしてみます。
大阪府の最低賃金1114円、分かりやすく奈良県の最低賃金986円(いずれも、2024年10月1日から)
逆算してみました。
●160万円÷1114円÷12月=119.6時間
大阪府内では、ほぼ週30時間以上と言うことで社会保険の加入が必要です。奈良県内なら135.2時間ですので、完全に社保加入です。
ギリギリなら、どんな感じなのか?
●1114円×119時間×12月=ほぼ159万円
●986円×119時間×12月=ほぼ141万円(奈良県内)
社会保険(厚生年金保険、健康保険)に加入となると、賃金額の15%ほどが企業負担の社保料となりますので、これも辛いです。もっとも最低賃金周辺では求人への応募も見込めないので、実際は+100円、200円が時給になる場合が多いと思われます。
特定適用事業所の制度がなくなり「週20時間以上社保加入」義務化になれば、ここの計算は役に立ちませんね。
なぜ「103万円の壁」だったのか
すでに書きましたが、大企業を中心に「配偶者手当」は廃止・減額の方向です。ですので、本当は現在勤務している企業ではなく、配偶者の勤務している企業の配偶者手当・家族手当を確認する方が正しいかも知れません。(以前から同じ内容を書いています。)
中小零細企業としては、103万円に関係なく労働時間数を増やして働いてもらえると嬉しいわけですが、今度は「社保加入」の問題が生じます。この問題は働いている従業員・社員(おもに非正規、パートタイマーさん)の意向と、企業の方針により、対応が違ってきます。
振り返ると、また以前と同じ問題だなあと思います。
企業としては、「自社ではどうするのが正解か」「家族手当の位置付け」などを改めてご確認ください。
弊所・大阪社労士事務所であれば、ご相談いただけます。
(基本的には、この問題は無料相談では対応できません。)
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