賃金台帳は事業場ごとに作成、それは無理では?
あるお客様から質問のあったことをベースに脚色して、このブログ記事にしました。守秘義務は問題無いと判断しています。
お客様からメール。
「賃金台帳は、事業場ごとに作成して保管するよう、労働基準法に決められていますが、弊社ではどのように考えれば良いのでしょうか。」と。
- 給与計算は、本社で一括して行っている(今の時代当たり前)
- 国内各地に、支店や工場がある(規模は不問~)
- 事業場ごとに、36協定を締結・届け出し、従業員が10人以上なら就業規則も届け出している
- 代表取締役が常駐しているのは、本社のみ(上場企業じゃないので)
疑問が何か分かりにくいと思いますが、「本社で全社の給与計算をしているのに、労働基準法に違反している状態なのかどうかを確認して欲しい」のが、お客様のオーダー。
法令を確認
労働基準法を確認しておきます。
労働基準法
(賃金台帳)
第百八条 使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。
労働基準法施行規則
第五十四条 使用者は、法第百八条の規定によつて、次に掲げる事項を労働者各人別に賃金台帳に記入しなければならない。
一 氏名
二 性別
三 賃金計算期間
四 労働日数
五 労働時間数
六 法第三十三条若しくは法第三十六条第一項の規定によつて労働時間を延長し、若しくは休日に労働させた場合又は午後十時から午前五時(厚生労働大臣が必要であると認める場合には、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時)までの間に労働させた場合には、その延長時間数、休日労働時間数及び深夜労働時間数
七 基本給、手当その他賃金の種類毎にその額
八 法第二十四条第一項の規定によつて賃金の一部を控除した場合には、その額
第2項以降は省略
(e-gov法令検索から)
108条には確かに「各事業場ごとに賃金台帳を調製」と規定されています。本社で給与計算を行っているために、疑問が湧いたようです。
★調製:規則などに合うように取り揃えてつくること
行政解釈(通達)を確認
108条に通達は出ているのか、労働基準法解釈総覧でチェックしました。書籍のページを画像ごとアップできませんので、文字で。
平成7年3月10日基収第94号
(ここの部分は省略)
次の1及び2のいずれをも満たす場合には、労働基準法第百七条及び第百八条の要件を満たすものとして取り扱う。
1 電子機器を用いて磁気ディスク、磁気テープ、光ディスク等により調製された労働者名簿、賃金台帳に法定必要記載事項を具備し、かつ、事業場ごとにそれぞれ労働者名簿、賃金台帳を画面に表示し、及び印字するための装置を備えつける等の措置を講ずること。
2 労働基準監督官の臨検時等、労働者名簿、賃金台帳の閲覧、提出等が必要とされる場合に、直ちに必要事項が明らかにされ、かつ、写しを提出し得るシステムとなっていること。
107条は労働者名簿に関しての規定です。
「事業場ごとに」をクリアするためには、臨検調査等が有ったときにサッと賃金台帳が表示や印刷できる状態であれば良い、と分かりやすく書いてみました。ここにハッキリ書かれているので、「本社で給与計算」は電磁記録でまとめられているというか、触れていないというか。
「直ちに」は即時の意ですが、常識的に考えて、表示や印刷にはある程度の時間は掛かります。印刷ならプリンターの速度等にもよりますが、数分は掛かります。また、賃金台帳を表示、印刷できるシステム(端末)のある場所と、臨検調査を対応する会議室が離れていることもあります。(笑)
意外と現実的に対応している
本社でなく、各事業場(ブランチ)で108条をクリアするのは、意外と簡単だと思ったのは私だけでしょうか。ちなみに、私の知る範囲ではIPOもされないので、適当でも構わないと思いますけど。
ただ、表示・印刷させるのに、本社の決済がいるとか、情報セキュリティの件で事前承認が必要だとかという状況なら、通達の内容を具体化しているとは言いにくいですね。
「事業場ごとに調製」ですが、普段なら当たり前すぎて何も意識しない規定です。復習できたことに感謝。
大阪社労士事務所
【大阪社労士事務所は、就業規則・労務相談をメイン業務とする社会保険労務士事務所です。】
年次有給休暇の管理、有休の計画的付与制度の導入、働き方改革の支援、就業規則の変更・見直し、各種規程の策定も行っています。
労働条件自主点検表が送付された場合の対応もおまかせください。
ご相談・ご依頼は、ご遠慮なくどうぞ。
まずは、「お問い合せ」フォームから。
依頼・委託を決めておられる場合は、電話 06-6537-6024(平日9~18時)まで。
不在時は、折り返しお電話させて頂きます。
貴社の人事労務の問題点をチェックします
外部から人事労務の問題点を指摘される前に、労働トラブル発生の前に、企業の人事労務問題点を監査します。是非、ご相談ご利用ください。▶人事労務監査
(社会保険労務士は、企業の経営労務監査を実施します。M&Aデューデリ、事業承継デューデリにも対応。)
a:126 t:3 y:1