PDFにした賃金台帳は、ずっと保管しても大丈夫?
今回は、お客様からの質問&相談事項ではなく、同業者である社会保険労務士の雑談からの記事です。途中までは真剣に答えていたのですが、勤務している社会保険労務士は勤務先での実情に凝り固まっており、法的な考えを無視しているように感じて、途中からはパス。
(社労士として知り得た業務上の秘密ではありませんので、遠慮無く公開します。)
最初の質問は、ありがちなアレです。
「賃金台帳は、何年保存しておけば良いのでしょうか?」
取りあえず過去のブログに何回も同内容の記事をアップしているので、リンクしておきます。新→古の順で。
▶文書管理規程がないと、文書の廃棄と電子化が問題に
▶電子帳簿保存法・インボイスの対応は、ルール策定から
▶マイナンバー開始から7年、書類の保存年限と廃棄は?
▶たまった文書類を廃棄したい・令和3年度版
▶文書を廃棄したいが、実際にはいつどれを?
文書管理規程がある場合
文書管理規程の規定によります。
不備があったり、時代に合わせるのであれば、規程の変更作業が必要です。
文書管理規程は、社歴の長い会社(昭和の時代に創立)なら備えているところが多い印象です。上場企業や従業員数500名以上の企業なら、当然のごとく文書管理規程はお持ちのはずです、たぶん。
文書管理規程がない場合
法定保存年限をベースに考えます。
先の回答であれば「源泉徴収簿を兼ねている賃金台帳であれば、7年(実質8年)の保存が必要」です。会社法の関係を含めれば、10年。このあたりになってくると、社労士ではなく、顧問税理士や監査法人に確認していただく方が良いです。
労働基準法だけに着目するのではなく、周辺の法令にも目を向けると違う結果になるかも知れませんね。
ここで脇から出てきた意見があります。
「20数年前から賃金台帳は紙ベースでの保存から、電子データ(PDF)に切り替えています。ですので、紙の賃金台帳は廃棄処分しましたが、PDFにしてからは全部保存していますよ。」と言う声。
これを、このブログのタイトルにしました。
以下、2つの章はコピペを多用していますので内容は薄いです。個人的なメモレベルですので、ご容赦ください。
個人情報保護法
個人情報保護法には、個人情報の廃棄はどのように規定されているのでしょうか。
個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)
(データ内容の正確性の確保等)
第二十二条 個人情報取扱事業者は、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データを正確かつ最新の内容に保つとともに、利用する必要がなくなったときは、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならない。
個人情報取扱事業者ですが、2017年の個人情報保護法改正により、規模による規定は廃止されています。そのため、「事業のために個人情報を使用している事業者」は全て個人情報取扱事業者であると判断します。
上記22条から分かるように、「個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならない」とあり、努力義務です。
賃金台帳は個人情報?
根拠法は、記載しませんが、賃金台帳は労働基準法に基づく事業場内に備え付け・調製しておく書類の一つです。
記載項目は、次の通りです。
(1)賃金計算の基礎となる事項、(2)賃金の額、(3)氏名、(4)性別、(5)賃金計算期間、(6)労働日数、(7)労働時間数、(8)時間外労働、休日労働及び深夜労働の労働時間数、(9)基本給、手当その他賃金の種類ごとにその金額、(10)労使協定により賃金の一部を控除した場合はその額
基本4情報のうちの氏名、性別が含まれていることから、賃金台帳も個人情報保護法の対象となります。源泉徴収簿を兼ねる場合には、住所や生年月日も記載されています。
ISMSの点から
自分の言葉では説明できないので、ウィキペディアから引用します。
▶情報セキュリティマネジメントシステム
情報セキュリティマネジメントシステム
情報セキュリティマネジメントシステム(じょうほうセキュリティマネジメントシステム、ISMS: Information Security Management System)は、組織における情報資産のセキュリティを管理するための枠組み。情報セキュリティマネジメントとは、ISMSを策定し、実施すること。
ISMSの目標は、リスクマネジメントプロセスを適用することによって、情報の機密性、完全性及び可用性を維持し、かつ、リスクを適切に管理しているという信頼を利害関係者に与えることにある。
ISMSの標準がISO 27001およびそれと同等なJIS Q 27001に規定されている(以下省略)
いろいろGoogle検索をしていると、分かったことがあります。
●「情報は持っているだけでリスクになる」
●ISO/IEC27001:2022では、この観点から「情報の削除」という管理策が追加されています。
つまり情報漏洩する可能性があるので、保存期間を過ぎたり、契約内容で削除が求められたりして、必要なくなった情報については削除して当たり前やろ、というのが常識になっているそうです。
社内規程は?
ここまで書くと、「PDFにした賃金台帳は、ずっと保存しても良いのでは?」という感想をお持ちの方々もいるかも知れません。そもそも法令にも違反していないし。
こちらは、どの企業(事業者)でもお持ちの規程のはずです。
●個人情報保護規程
●特定個人情報等取扱規程
この規程の中に「廃棄・削除」の章があり、個人情報や特定個人情報の廃棄・削除について規定されているはずです。再確認のほどお願いします。
多くの場合、保存年限や使用目的が終われば「廃棄・削除しなければならない」と義務として規定されています。ってことは、賃金台帳を保存保管を続けると言うことは、社内規程としての違反になります。
PDFでもサーバーの容量を使用しますので、無駄に勤務先の会社の設備を使用していることになりません?? ちなみに、今回の登場人物はそれぞれ1千名ほどの企業、1万人以上の企業に勤めていますので、容量も相当使っていると思いますが…。どちらも専任の情シス部門をお持ちですけど、何か。←念のために書いておくと、弊所・大阪社労士事務所のお客様ではありません。
社内規程違反で、自分自身を懲戒委員会に掛けますか。
結論
PDFにした賃金台帳は、ずっと保管しても大丈夫?
否
PDFにした賃金台帳であっても、社内規程に沿って、廃棄・削除するのが筋。
あかん、この記事もなにかデジャブのような気がしてきました。
大阪社労士事務所
【大阪社労士事務所は、就業規則・労務相談をメイン業務とする社会保険労務士事務所です。】
年次有給休暇の管理、有休の計画的付与制度の導入、働き方改革の支援、就業規則の変更・見直し、各種規程の策定も行っています。
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