賃金台帳は、電子帳簿保存法の対象物か?

お客様から質問がありました。
「今、会社で電子帳簿保存法の対象になる書類のチェックを行っています。それで、人事労務や社会保険の書類もどれが対象になるのか、ご指導ください。」
(と、言われても、電子帳簿保存法に対しては電子取引は保存やな、というレベルの認識です。そもそも、この電子帳簿保存法の専門家は社会保険労務士でないことは明白ですが、税理士さん?弁護士さん?それとも行政書士さん?)

Google検索で「電子帳簿保存法 賃金台帳」、検索結果を見ました。賃金台帳が明記されているホームページがいくつか、賃金台帳どころか給料手当さえ記載されていないホームページも多数。

「e-文書法・電子帳簿保存法コンサルタント」の先生は、はっきりと賃金台帳は電子帳簿保存法の対象では無い旨を書かれています。めちゃくちゃ心強いです。しかし、役所的なところが掲載していない…。
(リンク許可を取っていませんので、あえてリンクは張りません。)

大阪社労士事務所:賃金台帳は、電子帳簿保存法の対象物か?

以下、電子帳簿保存法の専門家ではないイチ社会保険労務士が書いた内容です。ただのGoogle検索の情報を並べただけですので、理解や理屈が間違っていてもご容赦ください。お詳しい税理士先生、弁護士先生、その他コンサルタントの方、教えてください。
(改行しています)










国税庁のホームページで探す

まずは、本家のホームページで探すことにします。
▶国税庁:電子帳簿保存法Q&A(一問一答)

こちらにあるPDFをチェックしました。賃金台帳は検索無し、給料手当も検索無し、という結果でした。令和4年1月1日以後に保存等を開始する方向けだけでなく、それ以前のものも確認しました。が、ココに明示明記されていないと不安になります。

国税関係帳簿書類とは

電子帳簿保存法の対象となる書類は、国税関係帳簿書類と言うことですので、Google検索しました。

何階層かを調べていると、いろいろ出てきました。法人税法で規定される帳簿書類がそれだと言うことで、見てみますと「法人税法施行規則別表二十三 普通法人等の帳簿の記録方法」に掲載されていました。
▶e-gov法令検索:法人税法施行規則
(条数で見ましたが、一番下に記載されています。)

  • (十四) (十三)に掲げるもの以外の経費に関する事項

    賃金、給料手当、法定福利費、厚生費、外注工賃、動力費、消耗品費、修繕費、減価償却費、繰延資産の償却費、地代家賃、保険料、旅費交通費、通信費、水道光熱費、手数料、倉敷料、荷造包装費、運搬費、広告宣伝費、公租公課、機密費、接待交際費、寄附金、利子割引料、雑費等に、それぞれ適当な名称を付して区分し、それぞれ、その取引の年月日、支払先、事由及び金額を記載する。ただし、少額の経費については、それぞれ、その日々の合計金額のみを一括記載することができる。

初めてそれらしき事項が出てきました。伏線回収~
ただし、ずばりそのものの賃金台帳の名称は出てきていません。

賃金台帳の位置づけ

賃金台帳の法的位置づけを確認しておきます。

労働基準法
(賃金台帳)
第百八条 使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。

その他、賃金・給与関係の書面としては、給与明細書、源泉徴収簿があります。

●給与明細書:労働基準法ではなく、所得税法が根拠。規定省略
●源泉徴収簿:いちおう皆さん作っていますが、所得税法では義務では無いという。てっきり作成義務があるものと信じていました。

私自身は、書面の作成根拠をベースに賃金台帳が電子帳簿保存法の対象となる書面なのかどうなのかを考えていました。冒頭のGoogle検索で出てきたコンサルタントさんの考えと近いというか、私自身の根本の考え方が間違っているのか、それでも「賃金台帳は電子帳簿保存法の対象ではない」と思っています。ただし、源泉徴収簿と兼用型の賃金台帳ならば、電帳法の対象であると認識しています。

優良な電子帳簿?

Google検索で、電帳法の関係を調べていると「優良な電子帳簿」というフレーズが出てきました。「それ、なんじゃ??」と調べてみますと~

モフ(財務省)のPDFに行き当たりました。やったー、公的なところ、それも親方の書面にぶち当たりました。
▶財務省:6 納税環境整備/(1)電子帳簿等保存制度の見直し

関係する部分をコピペします。

優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置(注)の対象帳簿(所得税・法人税)の範囲について、以下の合理化・明確化を行います。
(注)対象帳簿について、優良な電子帳簿の要件(訂正・削除・追加の履歴(トレーサビリティ)確保の要件、各帳簿間の相互関連性の確保の要件、検索機能の確保の要件)を満たして保存等がされた場合において、帳簿に記録された事項に関し申告漏れがあったときは、その申告漏れに課される過少申告加算税を5%軽減する制度です。
「その他必要な帳簿」について、申告に直接結びつきやすい経理誤り全体を是正しやすくするかという観点から、帳簿の範囲を合理化・明確化。
<対象となる帳簿の具体例>
・売上帳、仕入帳、経費帳(賃金台帳を除く。)、売掛帳、買掛帳(注)所得税の場合は、賃金台帳も対象となる。
・受取手形記入帳、支払手形記入帳、貸付帳、借入帳、有価証券受払い簿
・固定資産台帳、繰延資産台帳 等
※令和6年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用されます。

ここで初めて賃金台帳を目にしました。法人税法では対象外、所得税法では対象になるんでしょうか。

社会保険も電子申請なら対象?

実は質問をいただいた企業様は、社会保険・労働保険の手続きで電子申請が可能なものはすべて電子申請で対応されています。「まさか」と思っていましたが、最初のGoogle検索で出てきていました。

▶マネーフォワード:2022年1月の電子帳簿保存法の改正で人事労務分野が対応すべきことを解説
(リンク許可は取っていませんが、利用していたのでOKでしょ。)

更新日が2023年4月7日となっていますので、過去の古い内容ではないはずです。

そこには、社会保険・労働保険の電子書類はもちろん、電子での労働条件通知書も対象になると記載されています…。あー、どうすれば良いのか。

ちなみに弊所・大阪社労士事務所も電子申請していますが、お客様(社会保険労務士顧問)には紙に印刷して郵送しています。そのため、電帳法の対象ではないと思いますが、、、、、、

追加の情報

ある税務関係者との会話から(令和5年5月22日(月)追記)

「社会保険、労働保険の書類が国税関係帳簿書類に含まれるのか?」
この質問に対しては、少なくとも国税庁の関係書類では「含まれる」旨の文言は直接見たことがないとのこと。

すでに個人的には社会保険や労働保険の電子データ、例えば標準報酬の月額決定通知書も電子申請ならば電帳法の対象であると思っています。

結論「賃金台帳は~」

逃げるわけではありませんが、社会保険労務士の扱える法律(社会保険労務士法別表第一)には電子帳簿保存法は入っていません。先に書いたように税理士や弁護士の先生が電帳法の専門家・担当士業と捉える方が自然です。
(社会保険各法や労働基準法は、社会保険労務士の管轄ですので、マネフォさんの情報どおりならば、結構大変な問題です。「標準報酬の月額決定通知書」ならば、控除する根拠と言うよりは法定福利費の算出根拠の一つになります、確かに。)

調べる前までは賃金台帳の根拠法令が労働基準法であること、給与明細書や源泉徴収簿が所得税法に根拠があること、を考えて「電帳法の対象外」と考えていました。
(源泉徴収簿はややこしいみたいですが、年末調整時に使いますし、税務署からの書式にも入っていますし。義務では無いなんて、知らなかったです。)

法的な確証までは持てませんが、状況証拠を考慮すれば、PDFの賃金台帳は電子帳簿保存法の対象であると考える方が良い。それだけは言えます。社会保険・労働保険、労働条件通知書(労働契約書)も、電子データなら保存しましょうか。ファイル名は、検索可能なので気にする必要は無い?

今回の件に関しては、税務署に電話問い合わせ等は行っていません。もし万が一、一般の事業会社の方がこのページを見た場合は、顧問税理士さんにご相談ください。

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