アルコールチェック義務化での労務管理への影響

昨日は久しぶりに、某納税協会様で対面でのセミナー講師をさせていただきました。ここ2年ほどは一般の方向けへはオンラインばかりでしたが、本当に対面式は久しぶりでした。もちろん、マスクは着用していました。スクリーンはご用意いただいていましたが、横にずれて話してしまいました。

アルコールチェック義務化に関しては、納税協会の会報誌「納税月報」7月号に寄稿させていただきました。
▶納税協会:納税月報
(ただし、月替わりのようですので、7月号pdfがアップされているのは8月上旬頃までだと思います。)

某納税協会様で7/14セミナーにご参加なさって、疑問や相談したいことがある場合は、「お問い合せ」からご連絡をお願いします。

アルコールチェック義務化の概要

納税月報7月号をご覧いただければ良いのですが、ざっと書いておきます。

  • 道路交通法施行規則の改正により、いわゆる白ナンバーを使う事業所も安全運転管理者の選任届出やアルコールチェックが義務化された
  • 安全運転管理者の選任届出が必要なのは、自動車を5台以上管理している(マイクロバス1台以上)
    • 安全運転管理者の選任届出は、労働法の事業所と同じ考え方=1事業所単位
  • アルコールチェックは~
    • 令和4年4月からは、目視での確認+記録(1年保存)
    • 令和4年10月からは、上記+アルコール検知器を使っての確認
  • アルコールチェック自体は、出勤時or運転前と、運転後or退勤時の1日2回は必要

大阪社労士事務所・アルコールチェック義務化での労務管理への影響

アルコールチェックの担当部署

アルコールチェックの担当部署は、どこが最適なのでしょうか。
それは、貴社でしか分かりません。ただし、緑ナンバーであれば運行管理者が所属する部署が担当するケースが多いと思いますが、白ナンバーであれば、総務部?それとも営業部などの営業者を利用する部署?

とくに法令での規定はありませんので、総務部(総務部長や総務課長など)でも営業部(営業部長や営業課長など)でも、もちろん本社以外の事業所なら営業所長や工場長が、安全運転管理者として選任されるのかも知れません。

安全運転管理者が1名では、休暇取得時や出張時、外出時などアルコールチェック対応ができないことも考えられます。「副~」や補助者を選任しましょう。
(管理職が適任です。時間外労働の割増賃金支払いの適用を受けないので、もち深夜時間帯の手当は必要ですが。早朝や深夜での確認・目視等もありますから。とりあえず想定できる「運転前、運転後」の対応は考えておきます。)

ご質問をいただきました。2022年9月4日追記

「管理職以外でも、安全運転管理者を選んで良いのでは?」
はい、法令にはそのような規定はありません。ただ、統制が効くと言うことを考えれば、管理職の方が良いと個人的に思っています。非管理職だと「残業のフロー」の変更が必要になったり、事後承認ばかりになりそうです。

アルコールチェックでの労働時間

する側=安全運転管理者の側ですが、管理職を選任することで、余計な割増賃金支払いがないようにします。
(余裕のある企業様では、支払えば良いです。)

される側=運転者の側ですが、所定労働時間内、始業終業の時間内であれば問題はありません。ただし、出張時や外回りで「事業場外みなし労働時間制」を採用している場合は、アルコールチェックによって明確にチェックした時間が確認できるようになります。そこだけが懸念材料です。
(まあ、それを言い出すとスマホやGPS連動の勤怠システムとか、いろいろ出てきそうなので、「労働時間が算定しがたい」としておきます。)

昨日のセミナーでもお話ししたのですが、対労働基準監督署ならば「楽観論」を取った場合、気にする必要はないかと。なぜならば、このアルコールチェックは道路交通法に関することであり、労働基準監督官があえて労働法での必須書類でもない「アルコールチェックの確認書類」を出せと言うのか。「悲観論」や対従業員に関しては、「アルコールチェックなんて、常識ヤン」となります…。

厚生労働省から直接の通達は出ていませんので、従来からの通達を参照して、人事総務としては対応するしかありません。

私が労働者であった場合で、イヤな辞めさせられ方だったら「アルコールチェックの確認書類」に基づいて残業代を請求しますね。時効3年、60時間超の割増率なども考えれば、、、、、

アルコールチェック義務化により見直す就業規則など

運転前後の酒気帯びの確認が義務化されたことに併せて、関連する社内規程の見直し・整備は必須です。以下に見直した方が良い規程類を示します。
・就業規則(服務規定、遵守事項、懲戒規定)
・社有車管理規程(社有車使用規程など名称に関係なく)
・出張規程(自動車での出張を想定している場合)
・マイカー業務使用規程
・マイカー通勤規程(通勤自体は今回の義務化対象ではありません)
・その他、業務上において自動車の使用を考慮している規程全て

運転前後に「アルコールチェック」という新たな義務を課しますので、それを規程類に埋め込みます。

一番簡単なのは、「自動車を運転する場合は、運転前後には、アルコールチェックを行わなければならない」でしょうか。練れていない規定ですので、ご容赦ください。主体が誰かによって表現が変わりますので、自社に合った形で。緑ナンバーのアルコールチェック義務化の際の就業規則規定例は、多くの場合そのままご利用になれません。

使用者責任や運行供用者責任は、逃れることができないものとされていますので、従業員・社員のマイカーを常時業務使用することがあるのならば、本来はそのあたりも見直した方が良い気がします。

【おまけ】アルコール検知器

以前ブログ記事で書いたように、私もアルコールチェッカーを買いました。ちゃんと計測できますが、安い500円程度で購入できるものは耐用回数が500~700回ほどのようです。

1日2回使えば250日、つまり1年です。2名で使えば半年ほど、3名で使えば4か月ほどしか保ちません。吹く部分が小さいので、他人とは共用したくないのが本音です。

購入をご検討なさっているのであれば、「電気化学式センサー」のアルコール検知器の方が良いかと。きっちり測れるようですが、本体は半導体式(私の持っている安いチェッカー)と比べて高額です。
▶アマゾン:「アルコール検知器 電気化学式」(アフィです)

【おまけのおまけ】再チェック・2022年9月8日追記

前日または朝食時等に飲食したものによっては、運転者の体質でアルコール検知がされるそうです。←緑ナンバーの運行管理者から聞きました。 奈良漬け、納豆などは検知されやすいとか。検知された場合は、水を使ってうがい、歯磨きなどをしてもらいます。例えば、15分後に再チェックを行います。初回のアルコールチェックも記録しておいてください。再チェックでアルコールの数値が出た場合は、運転させてはアウト。

常識として、次のような飲食物にはご注意ください。以下一例。
●アルコールを溶剤とした栄養ドリンク
●ビアリー(商品名)
●日本酒を使った押し寿司
●ウイスキーボンボンの類い

ノンアルコール飲料でアルコール0.00%と表示してあるのは、ごく微量のアルコールが含まれているので、ゼロと表示しないそうです。が、私の場合はプラシーボ効果で酔っ払った感じになり、目の周りが赤くなります(ホンマです)。

【おまけ2】アルコール検知器、延期だって

日本経済新聞のウェブ記事より引用。(2022年7月14日 20:25)

飲酒検査義務化を延期 白ナンバー向け、検知器不足

警察庁は14日、「白ナンバー」事業者に対するアルコール検知器を使ったドライバー飲酒検査を10月から義務化する予定だったが、延期すると明らかにした。世界的な半導体不足などが影響して検知器が供給不足となり、メーカーが延期を要望していた。期間は未定で、警察庁の担当者は「供給状況を見ながら適切な時期に始めたい」と話している。

警察庁はパブリックコメント(意見公募)を7月15日~8月13日に受け付ける。

義務化の対象は、白ナンバーを5台以上か、定員11人以上の車を1台以上使う事業者。3月末時点で全国に約35万2千事業者、ドライバーは約808万2千人。アルコール検知器による検査は運転前後に実施し、記録は1年間保存する。

千葉県八街市で昨年6月、ドライバーが飲酒運転した白ナンバーのトラックに児童5人がはねられ死傷した事故を受け、義務化が決まった。〔共同〕

もともと4月施行だったのが、アルコール検知器の不足が見込まれるので10月施行に決まったと伺いましたが、事実上の再延期でしょうか。

昨日のセミナーで納期云々の話しをしましたが、半分ウソをついた形になってしまったかも。

【おまけのおまけ2】「面倒すぎる」2022年10月6日追記

この半年間、アルコールチェックを実施している某企業様から電話でご連絡をいただきました。
「アルコールチェックして、パソコンに入力するのが面倒すぎるが、他の企業は本当にやってるの?」

はい、面倒です。毎日毎回目視でチェックして、それをパソコンに入力する。書式自体はフリーのエクセルのものをダウンロードしたのですが、車番や運転する社員名などはプルダウンメニューに。

クルマ5台で、全部出払うと、最低10回はチェックして入力。出る時間もバラバラなら、戻ってくる時間もバラバラ。
「そのたびに、仕事が中断してしまうけれど、仕方ないのは分かってるけど…。」

クラウドのアルコールチェックシステムを導入しても、ほったらかしにはできません。うーん、どうしましょ!?

【おまけのおまけ3】「無理な場合がありました」2023年4月26日追記

1年アルコールチェックを実施している企業様は、社内の安全運転管理者や補助者だけでは対応できず、外部へ業務委託されました。全面的ではなく、所定労働時間内は従来どおり社内で、それ以外は業務委託・代行で対応されることにしたようです。

「アルコールチェックの外注がOKか否か」ですが、法的には問題なさそうです。補助者扱いですので、社内の安全運転管理者の選任等は必要です。(引用に関しては、控えます。)

このアルコールチェック代行会社ですが、イメージとしては秘書電話のような感じでしょうか。

アルコールチェック義務化に関してのセミナー講師を、追記日の前日にご依頼いただきました。が、諸事情によりお断りすることに。やはり社会保険労務士が道路交通法に関してアレコレ話すのは良くないな、と。人事労務や働き方改革なら嬉しかったのですが。納税協会様や商工会議所・商工会であれば、過去現在もお断りしておりません、アルコールチェック義務化セミナーでも。

急がないと

1事業所に5台以上の自動車があるのか、誰も分かりません。警察の方も、陸運支局でも。なぜなら、「役員が使っているマイカー」「従業員のマイカーを業務使用している」ことなど、把握できません。

もし、万が一安全運転管理者の選任届出がまだの場合は、お早めに事業所管轄の警察署にお届けください。勘違いされると困りますが、1事業所で5台以上自動車を管理している場合です!4台までなら、安全運転管理者の選任届出もアルコールチェックも義務化されていません。マイクロバスなら1台でも必要ですが、旅館くらい?

まあ、もっとも就業規則には「酒気を帯びて勤務してはいけない」とか「酒気を帯びている場合は、入場(会社の管理する施設内への)を禁止する」などの文言が入っているはずです。
(役員は、お昼からビールを飲んでいるって??役員に就業規則は適用されませんので、と。。。。。)

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