無報酬の役員でも、副業兼業の申請は必要か?

とある企業の人事労務ご担当者様からご連絡からご相談を受けました。(この出だし、3回連続です!)
「うちの社員が、あるところの役員に就任するよう要請されているんですが、副業の申請をしてもらわないといけないでしょうか? ただ、役員としての報酬は無いらしいんですが。」

厚生労働省モデル就業規則を引用しようと思ったのですが、あいにく適当な規定がありませんでした。そのため、手持ちの規程から引っ張ってきました。

第○条(副業・兼業の定義)

1.他の事業者の役員等に就任し、または従業員として労働契約を結んだり、営利を目的とする業務に従事すること
2.自ら営利を目的とする私企業を営むこと

例え、副業・兼業の定義というタイトルが付いていない場合でも、服務規律に「してはいけないこと(禁止事項か、許可の必要なこと)」に同様の規定があるはずです。ここ10年以内に就業規則を新規で作成されている場合は、たいてい規定があるかと。

大阪社労士事務所・無報酬の役員でも、副業兼業の申請は必要か?

●事業者とは
役員・従業員の前に「事業者」って、どの範囲を指すのか?
何も考えないと「商売をしているところかなあ」と思ってしまいますが、再確認を兼ねて検索してみました。

ウィキペディアによると、次の通り。
「事業者(じぎょうしゃ)とは、事業をおこなうもの。日本の国税法令等での「事業者」とは、個人事業者(個人事業主、 事業を行う自然人)と法人や団体を指し、事業とは、同種の行為を反復、継続、独立して行うこと、としている。単に業者(ぎょうしゃ)ともいう。」

広いですね、法人・団体も含みますか?
で、ザックリ想定できる範囲でメモしておきます。

  • 株式会社
    事業者として一番イメージしやすいですね。親族から役員就任を打診されるケースは、現代ではだいぶん少なくなりました。(昔の7人時代から比較すると、です。)ただ就任することのリスクもありますので、役員報酬ゼロは…。ただ、代表取締役にするための数あわせの役員なら、あり得るかも。
    • 登記簿を見れば、役員の氏名は出てきます。
  • 社団法人・財団法人
    公益なら滅多に無いと思いますが、一般社団とかの方なら株式会社と同じ意味であり得るかも。
    • 株式会社と同じく、登記簿を見れば、役員の氏名は出てきます。
  • NPO
    収益事業を行う行わないでも変わってきますが、会費収入が主な収入源のところでは役員報酬は出ていないのが一般的かなあと言う感覚です。
  • 消防団
    事業者に入れて良いのか悪いのか。建前上、出動日当が出たり、退職金が出たりと、お金の動きはありますね。
  • 自治会
    私の地域にも自治会があり、何年か前には理事を引き受けていましたが。実際は月イチの理事会参加やクリーンデイやらイベントで結構大変です。でも、理事報酬は出ていないですね。
  • スポーツ少年団
    他の方から聞くところに、こういうのもあるそうです。役員の方から伺いましたが、詳しいことは分かりません。
  • 商工会議所・商工会
    まあ滅多にないと思いますが、青年部・女性会のような下部組織であれば、個人名登録になります。その場合でも、もともと役員さんが多いと思いますが、たまに従業員さんで登録する場合も。青年部の役員になることもありますわね。

役員報酬という定額の決まったお金はなくとも、活動日に応じての日当が出たり、交通費は実費弁償であったり。ただ、先の規定には「有償、無償」は問うていない訳ですから、役員報酬が無報酬でも会社には副業・兼業の申請やら届出は必要です。

では、問題はないのか?
あるとすれば、本業での秘密保持契約や守秘義務契約との関係でしょうか。本業に関係する部分で、「あるところの役員」での活動にも影響することもあるのでは。と、中途半端な書き方でスミマセン。

時間的には、たいてい夕方以降の夜間であったり、土日祝の休日での活動なので、勤務時間には直接影響はないと言えるでしょう。経験上は、そう言っても構わないと思います。

結局、副業・兼業の申請等は企業側に提出していただきました。それを今、企業様の役員会で検討するようです。個人的には認められると思いますが、秘密保持契約がネックになるかも知れません。

※守秘義務の関係で、脚色しています。
※追記:2022年8月4日
実は、相談のあった役員就任での副業・兼業の申請は、ご本人様自ら取り下げられました。その理由自体は伺っていません。ただ、団体での内容が、企業の本業とバッティングする可能性があることを最初のご相談の際に伺っていました。だからかも…。

労務相談顧問
就業規則の作成・変更・見直し
ハラスメントの外部相談窓口


大阪社労士事務所

【大阪社労士事務所は、就業規則・労務相談をメイン業務とする社会保険労務士事務所です。】

年次有給休暇の管理、有休の計画的付与制度の導入、働き方改革の支援、就業規則の変更・見直し、各種規程の策定も行っています。
労働条件自主点検表が送付された場合の対応もおまかせください。

ご相談・ご依頼は、ご遠慮なくどうぞ。

電話 06-6537-6024(平日9~18時)
不在時は、折り返しお電話させて頂きます。
または、「お問い合せ」フォームから。

貴社の人事労務の問題点をチェックします

外部から人事労務の問題点を指摘される前に、労働トラブル発生の前に、企業の人事労務問題点を監査します。是非、ご相談ご利用ください。▶人事労務監査
(社会保険労務士は、企業の経営労務監査をサポートします。)

a:7238 t:1 y:6