社会保険の適用拡大、1年前からの準備が最適

労務相談顧問をいただいている企業の総務部長とお話ししていると、話題が飛びました。
「うちの会社は、社会保険の適用拡大の対象になりますか?」

こちらの企業様は、従業員数が3ケタ、被保険者数も3ケタ、前提として500人以下ですが、社保拡大適用の対象です。ただ、パートタイマーさんは非常に少ないので、影響はそれほど大きくはありません。

概要を念のため転記しておきますと~

  • 令和4年10月からの改正
    • 「特定適用事業所」の要件
      (変更前)被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時500人を超える事業所
      (変更後)被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時100人を超える事業所
    • 「短時間労働者」の適用要件
      (変更前)雇用期間が1年以上見込まれること
      (変更後)雇用期間が2か月以上見込まれること(通常の被保険者と同じ)
  • 令和6年10月からの改正
    • 「特定適用事業所」の要件
      (変更前)被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時100人を超える事業所
      (変更後)被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時50人を超える事業所
      ※短時間労働者の健康保険・厚生年金保険の適用要件についての変更はありません。

いつものように、詳細については本家のサイトへどうぞ。
▶厚生労働省:社会保険適用拡大特設サイト
▶日本年金機構:令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大

大阪社労士事務所・社会保険の適用拡大、1年前からの準備が最適

なぜ1年前からの準備が必要なのか?
「直前に対応・対策しようとしても、できないことがある」からです。

有期契約の場合

5年以内での契約更新にするなど無期転換対応をしていても、今回の社会保険の適用拡大と無関係です。300人以上の企業様であれば、ある一定レベルの無期転換対応策を講じておられることが多いかと思いますが、300人未満では策が不十分なことも。

半年の有期契約をされている企業様もあるでしょうし、1年での有期契約の企業様もあると思いますが、令和4年10月を含む契約期間の前に労働条件の見直しをすることを強くおすすめします。であれば、早い企業様であれば今年の8月9月には何らかの策を考えておきたいところ。

パートタイマー・アルバイトの方には、丁寧な説明が必要です。それとともに、自社の方針も明確にしておきます。
(自社の方針とは、社会保険の適用拡大を歓迎するのか引き気味に対応するのかということ。歓迎する=対象者の場合そのまま資格取得を行う、そう言うことです。ちょうど1か月ほど前に、ある交流会で501人以上の企業様(特定適用事業所)の関係者と雑談する機会があったのですが、対応の方針が明確でないと対応策は立てにくいです。)

法定福利費は賃金総額の15~16%です。対象者の月例賃金・年収が分かれば、増加する法定福利費はすぐに計算できます。

無期契約の場合

有期契約の場合と、基本的な考えは同じです。企業様の方針が決まらない限り、何をどうするのが良いかは答えを出しにくいです。

ただ、無期契約と言うことは長期間の雇用を前提としているわけですので、丁寧な説明が必要かと。有期雇用と違い、契約について定期的に協議する機会が無い場合もありますので、まずは機会を作るところから始めましょう。

すでに雇用保険の被保険者である従業員・社員

週20時間以上30時間未満(正社員の3/4未満)のパートタイマー・アルバイトの処遇をどうするのか、一番悩ましいところです。対象者への説明だけでなく、ヒアリングもします。

労働条件の変更によっては、雇用保険の被保険者を外れることもあるので、そういう事実も伝えておきます。

週29時間のパートタイマーさんでも社会保険加入をイヤがるケースがあります。週20時間でも社保ウエルカムのこともあります。

2か所以上勤務になってしまう場合

例えば、2つの事業所でそれぞれ週20時間の勤務、どちらも令和4年10月から特定適用事業所になる、あるいは任意適用で2か所勤務で社会保険加入をしなければならないケースも出てきます。

▶日本年金機構:複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き
書類で言うと、「所属選択・二以上事業所勤務届」です。

このあたりのことも含めて、対象となるパートタイマー・アルバイトの方にはヒアリングもした方が良いでしょう。

短時間労働者はサブではありません

パートタイマー・アルバイトの方々が、短時間・短日数で働く事情は単純に「収入は少なくても良い」とは限りません。正社員やフルタイマーとして採用されなかった、経験を積むためにパートタイムから、すき間時間を有効に使いたい、などの場合もあります。いくつかの書籍・雑誌に「パートタイマーは、お金を多く稼ぐ必要のない方ばかり」という暴論みたいなことも書いてありましたが、「パート収入がメイン」の方も少なくないのが私が見た現実です。

「本当は、健康保険や厚生年金保険に加入できるなら、入りたい」
全く逆のことも。
「配偶者の勤務先の扶養手当・家族手当の支給範囲内で働きたい」
労働条件・契約内容と、実態を確認した上で、対応策をしていただきたいですね~。企業様の方で一方的に決めるのでなく、十分ヒアリングした上で対応される方が良いと思います。

お悩みなら、単発でのご相談も承ります。
(ブログにスパッと切れ味鋭く記事を書きたいのですが、諸事情によりお許しください。)

労務相談顧問
就業規則の作成・変更・見直し
ハラスメントの外部相談窓口


大阪社労士事務所

【大阪社労士事務所は、就業規則・労務相談をメイン業務とする社会保険労務士事務所です。】

年次有給休暇の管理、有休の計画的付与制度の導入、働き方改革の支援、就業規則の変更・見直し、各種規程の策定も行っています。
労働条件自主点検表が送付された場合の対応もおまかせください。

ご相談・ご依頼は、ご遠慮なくどうぞ。

電話 06-6537-6024(平日9~18時)
不在時は、折り返しお電話させて頂きます。
または、「お問い合せ」フォームから。

貴社の人事労務の問題点をチェックします

外部から人事労務の問題点を指摘される前に、労働トラブル発生の前に、企業の人事労務問題点を監査します。是非、ご相談ご利用ください。▶人事労務監査
(社会保険労務士は、企業の経営労務監査をサポートします。)

働き方改革の情報も、就業規則見直しセミナー

次回のセミナー開催は、5月6日です。セミナーだけでなく、個別相談の対応も行っています。働き方改革対応セミナーも、同日開催。内容は、「簡単わかりやすい同一労働同一賃金の対応」になります。

「働き方改革の実務対応セミナー」「就業規則見直しセミナー」の講師も承っております。

a:1064 t:1 y:0