令和3年度からの高年齢者の賃金設計と処遇

「まだ先の話、令和2年度だって半年以上あるよ。」
「新型コロナウイルスの影響も分からないのに、何を今?」
いえいえ、人事労務・労働関係の法律は施行年月日が決まっており、延期などの特例措置が発動されるとは思いません。この「コロナ国会」で年金制度改正法が成立しました。これ、たぶん多くの企業様に影響があります。

来年4月には、中小企業も「同一労働同一賃金の対応」しなければなりません。と言っても、現実には次のような企業様は気にした方が良い、それ以外の企業様は余裕が無いのかも知れません。

  • 気にした方が良い企業様
    • 新規学卒者を雇い入れる企業様
    • 従業員数がざっと100名以上の企業様
    • 有期契約の社員・従業員が全体の3割以上の企業様
    • 平均年齢が40歳超(切迫感があるのは45歳超でしょうか)の企業様
    • ここ5年以内に、満60歳を迎える社員・従業員がいる企業様

あれ、年金の改正の話しはいずこに? 同一労働同一賃金の対応が一番近い時期なので書いたんですが、「気にした方が良い企業様」は気にした方が本当に良いです。

★想定している企業様は、60歳定年制で65歳まで有期雇用の継続雇用制度を整備しているところです。

大阪社労士事務所・令和3年度からの高年齢者の賃金設計と処遇

同一労働同一賃金の対応

中小企業にも同一労働同一賃金の対応を迫られます。施行年月日は、来年の4月1日。それまでに、対応を済ませておかねばなりません。

簡単に済ませたいなら、今年になって書いたブログ記事がわかりやすいと思います。
簡単わかりやすい同一労働同一賃金の対応実務

分かりにくいようであれば、弊所・大阪社労士事務所に業務としてご依頼ください。ただ、時間的な余裕はそうそう残されていません。真面目にやり始めると100名程度の企業規模でも半年は掛かります。職種・雇用区分の数にもよりますが、ざっと3か月以内で仕上げることができます。

10月には、有期契約社員の最高裁判決が出る見込みですが、そこまで待つ程度なら間に合うかな…。残すところ8か月。

企業様によって、この同一労働同一賃金の考え方は違っていますので、これがベストという手法はありません。簡単わかりやすい同一労働同一賃金の対応実務も、上場企業様やIPOを目指している企業様にはおすすめできない内容です。

70歳までの就業機会の確保

「少子高齢化が急速に進展し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境の整備を目的として、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)の一部が改正され、令和3年4月1日から施行されます。」と厚生労働省の文章をまんまコピーしました。

高年齢者就業確保措置は、定年引上げ、継続雇用制度の導入、定年廃止、労使で同意した上での雇用以外の措置(継続的に業務委託契約する制度、社会貢献活動に継続的に従事できる制度)の導入のいずれかを実施しなければなりません。

が、努力義務です。
ただ、世間の情勢を考えれば「気にした方が良い企業様」であれば、何らかの措置を講ずるのがベターでしょうか。

ユルーくでも構わないのであれば、「65歳になる社員については、本人の希望があり、会社が認めた場合(=上司・部署の推薦当があった場合)は、70歳まで~」というのでも、良いかと。努力義務を果たしたことにはなりませんが。

あとは、助成金が使えますので、機会があれば使ってください。

年金制度改正法(在職老齢年金の改正)

今回の年金制度改正法によって、現実に一番影響のあるのがこの「在職老齢年金の改正」ではないでしょうか。60〜64歳に支給される在職老齢年金について、支給停止とならない範囲(支給停止が開始される賃金と年金の合計額の基準を、現行の28万円から47万円に)を引き上げられます。施行年月日は、1年半ほど後の令和4年4月1日。

大企業様や上場企業様で無い場合は、60歳定年後の再雇用時にガクッと給与の額面を下げてきました。それが、「同一労働同一賃金の対応」で少し考えなくてはならなくなりました。が、この在職老齢年金の改正は、「余計なテクニックを使うことをしなくても良い状態に近く」なります。

なにしろ、28万円→47万円ですから。

実施が1年半後の令和4年度から。詳しくは、厚生労働省のサイトへ。
▶厚生労働省:年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました

注意したいのは、次の「継続給付の改正」と一緒で、再雇用時に額面をガクッと下げることが慣例であった企業様です。この1年2年ほどの間に再雇用時のやり方、金額設定を変えた方が良いと思います。この在老で影響を受ける期間は短いです…。

継続給付の改正

65歳までの雇用確保措置の進展等を踏まえて、高年齢雇用継続給付の最大支給率を15%から10%へ引き下げる一方、最大支給率に対応する賃金低下率(60歳到達時の賃金月額と比較した支給対象月に支払われた賃金額の低下率)を61%以下から64%以下へ引き上げることが決まっています。施行年月日は、令和7年4月1日から。

「気にした方が良い企業様」でもメモしましたが、ここ5年6年で定年後再雇用者が出そうで(つまり現時点で、54歳とか55歳)、再雇用時の賃金設定は、定年時の60%ほどに設定していた企業様はやはり要注意。

同じ再雇用時30万円でも、今は45,000円の継続給付、令和7年度からは30,000円の継続給付となります。(ザッとです

高年齢雇用継続給付は、平成19年度までだったところ、平成24年度までで廃止されるはずが、ズルズル存在が引き延ばされています。反対の声が大きかったのですが、今回は給付率が下げられます。

忘れるな、第二種計画認定

雇用期間5年超での無期転換ルールを除外するのが、第二種計画認定=継続雇用の高齢者の特例の認定申請です。だいぶん前からですが、弊所・大阪社労士事務所のお客様でもなかなか申請してもらえません。

今回年金の改正があり、70歳までの就業機会確保があり、改めて確認したところです。
▶厚生労働省:【重要】無期転換ルールの特例に関する申請をする場合はお早めに(事業主や人事労務担当者の方向け)

大阪社労士事務所・令和3年度からの高年齢者の賃金設計と処遇:継続雇用の高齢者の特例(第二種計画認定・変更申請)
(これです。無期労働契約の労働者(例 : 正社員)が定年に達した後、同一の企業に引き続き雇用される有期労働契約の労働者が対象となります。)

必ず認定申請の手続きを取ってください。弊所・大阪社労士事務所に業務依頼されても良いのですが、簡単ですので自社で対応されることをおすすめします。(依頼されても、そこだけだと1万円2万円

まとめ

バラバラに、簡潔に概要だけメモしました。
同一労働同一賃金の対応
70歳までの就業機会の確保
年金制度改正法(在職老齢年金の改正)
継続給付の改正
第二種計画認定

施行年月日ごとにバラバラに対応するのではなく、同じタイミングで対応するのが合理的だと思います。施行時期だけ見ても、「同一労働同一賃金」「70歳までの就業機会確保」「第二種計画認定」は、同時にできるはずです。
(第二種計画認定の申請は、来月にでも行ってください、まだの企業様!)

年金改正、継続給付の改正も、「今」手を打っておかないと、これこそ、直前になって対応していては、高年齢者・再雇用者の賃金設定や処遇がおかしくなってしまいます。あまりに遅いと、再雇用時の話し合いもやりにくいのでは。

このブログ記事は、お客様から質問や相談があったわけではなく、年金改革法の勉強会講師をするに当たって、必要最低限の内容をまとめたものです。


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次回のセミナー開催は、8月5日です。セミナーだけでなく、個別相談の対応も行っています。働き方改革対応セミナーも、同日開催。内容は、「簡単わかりやすい同一労働同一賃金の対応」になります。

「働き方改革の実務対応セミナー」「就業規則見直しセミナー」の講師も承っております。

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