平成27年9月30日改正労働者派遣法施行前の情報です。
労働者派遣事業を始める
まずは、次の質問にお答えください。
派遣元責任者講習は、受講されましたか?
財産要件は、クリアしていますか?
役員に前科の方は、いないでしょうか?
事務所は、20平米以上ありますか?
事業目的に「派遣事業」が入っていますか?
法律を守る気持ちがありますか?
登録型の派遣事業を始める場合は、一つでも×(ノー)なら、そこから替えていかないと、許可がいただけません。
労働者派遣事業とは
労働者派遣事業とは、派遣を行う企業(派遣元事業主)が雇っている従業員を他の企業に派遣し、派遣先の企業の指揮命令により、派遣先の仕事をしてもらうことをいいます。
労働者派遣事業には2種類あります。
- 一般労働者派遣事業
いわゆる登録型の労働者派遣事業をいいます。
たとえば、派遣で仕事をしたい人が派遣会社に登録をしておき、仕事があるときに派遣されるタイプです。
派遣労働者は、派遣先が決まっていないときは、登録だけで派遣元の会社に雇われているのではないため、給料は支払われません。
一般労働者派遣事業を行うには、厚生労働大臣の許可を受けます。
- 特定労働者派遣事業
自社で常に雇っている人(常用雇用労働者※)を依頼があれば派遣する労働者派遣事業をいいます。
派遣労働者は派遣元の会社で雇われているため、派遣先が決まっていなくても派遣元の会社から給料が支払われます。
特定労働者派遣事業を行うには、厚生労働大臣に届出をします。
※常用雇用労働者
- 期間の定めなく雇用されている労働者
- 過去1年を超える期間について、引き続き雇用されている労働者
- 採用時から1年を超えて引き続き雇用されていると見込まれる労働者
一般労働者派遣事業の許可および特定労働者派遣事業の届出は企業単位でします。
常用雇用労働者以外の派遣労働者を1人でも派遣する場合は、一般労働者派遣事業の許可申請をします。
そもそも人材派遣や人材紹介といわれる人材のビジネスは、職業安定法で労働者供給事業として禁止されています。
1986年に労働者派遣法が制定され、許認可を取得した企業のみが事業を行うことができるようになり現在に至っています。
労働者派遣事業を行うことのできない業務
労働者派遣は、雇用関係がある企業と実際に働く企業が違うので、会社と派遣労働者とのトラブルを防ぐために、労働者派遣事業を行うことができない業務があります。
- 港湾運送業務
- 建設業務
- 警備業務
- 病院等における医療関係の業務
(紹介予定派遣や育児休業者などの代替要員のための派遣であれば病院等への派遣も可能です。) - 人事労務管理関係のうち、派遣先で団体交渉や労使協議の際に会社側の当事者として行う業務
- 弁護士、外国法事務弁護士、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、弁理士、社会保険労務士、行政書士の業務
- 建築士事務所の管理建築士の業務
一般労働者派遣事業
- 説明会等への参加
厚生労働大臣の許可を受けると一般労働者派遣事業を始めることができます。
しかし、許可を受けるためには、事前にしておくことがいろいろあります。
各都道府県労働局では許可申請のための説明会があります。
また、事前相談にも応じてくれます。
- 派遣元責任者講習の受講
一般労働者派遣事業の申請許可の要件の一つに、派遣元責任者が派遣元責任者講習を受けていることがあります。
許可申請をする前5年以内に、受講しておきます。
講習の実施機関、日程等については厚生労働省や都道府県労働局のホームページで確認することができます。
- 許可要件の確認
一般労働者派遣事業の許可を受けるための必要な要件を満たしているかどうか、必要なものがそろっているかどうか確認し、準備します。
主な要件には次のものがあります。
- 欠格事由に該当しないこと
欠格事由とは、禁固以上の刑または労働関連法令に違反し罰金刑に処せられ5年経過していない場合などのことです。
欠格事由に該当している経営者・社長が許可申請を行っても許可してもらえません。
- 専ら派遣でないこと
専ら派遣とは、決まった企業にだけ労働者を派遣することをいいます。
労働者を派遣しようとしている企業が特定の場合、許可申請を行っても許可してもらえません。
- 派遣元責任者を選任すること
(1)~(4)にすべてあてはまる人を派遣元責任者として選びます。
(1)派遣元責任者講習を受講していること
(2)未成年者でないこと
(3)欠格事由に該当しないこと
(4)一定の雇用管理等の経験があること
- 派遣労働者の教育訓練体制が整っていること
派遣労働者に、どんな知識がいるのか、講座を受講してもらうのか、教育訓練の計画を立てて、受講してもらう能力をアップするための体制を整えます。
教育訓練のための費用は企業の負担です。
- 個人情報を適正に管理するための必要な措置が講じられていること
派遣労働者の個人情報の取扱いなどについて定めた個人情報適正管理規程を作成し、個人情報を何に使うのか、どうやって保管するのかを決めます。
- 次の資産要件を満たしていること
派遣労働者の給料がきちんと支払われるために、派遣元の企業に一定の資産があることが要件となっています。
・資産総額−負債総額≧2,000万円×事業所数
・資産総額−負債総額≧負債総額×1/7
・現金預金の額≧1,500万円×事業所数
- 事務所の面積がおおむね20平方メートル以上あること
一般労働者派遣事業を行うためには一定の広さの事務所を用意します。
事務所の広さは十分であっても事務所の所在地によっては許可が下りないことがあります。
- 労働保険・社会保険に加入していること
まだ労働者を雇っていない場合は、労働者を雇い次第加入することになります。
- 欠格事由に該当しないこと
一般労働者派遣事業の申請手続き
許可要件をすべて満たしていれば、申請に必要な書類をそろえて都道府県労働局を経由して厚生労働大臣に許可申請を行います。
必要書類
- 一般労働者派遣事業許可・許可有効期間更新申請書3通(正本1通、写し2通)
- 一般労働者派遣事業計画書3通(正本1通、写し2通)
- 次の添付書類(正本1通、写し1通)
法人の場合 個人の場合 定款または寄付行為 住民票(本籍地記載あるもの)の写し
および履歴書登記事項証明書 所得税の納税申告書の写し 役員の住民票(本籍地記載あるもの)の写し
および履歴書所得税の納税証明書 貸借対照表および損益計算書 預金残高証明書 法人税の納税申告書の写し 不動産の登記事項証明書 法人税の納税証明書 固定資産税評価額証明書 賃貸借契約書等事業所の使用権を証する書類 賃貸借契約書等事業所の使用権を証する書類 派遣元責任者の住民票の写し
および履歴書派遣元責任者の住民票の写し
および履歴書個人情報適正管理規程 個人情報適正管理規程
許可申請には、手数料(収入印紙)と登録免許税が必要です。
許可申請を行ってから許可までには2,3カ月はかかります。
大阪府の場合は、現地調査(事務所の確認等)が行われます。
許可されると許可証が交付され、いよいよ事業開始です。
特定労働者派遣事業
特定労働者派遣事業を行う場合、都道府県労働局を経由して厚生労働大臣に届出をします。
必要書類
- 特定労働者派遣事業許可・許可有効期間更新申請書3通(正本1通、写し2通)
- 特定労働者派遣事業計画書3通(正本1通、写し2通)
- 次の添付書類(正本1通、写し1通)
法人の場合 個人の場合 定款または寄付行為 住民票(本籍地記載あるもの)の写し
および履歴書登記事項証明書 役員の住民票(本籍地記載あるもの)の写し
および履歴書賃貸借契約書等事業所の使用権を証する書類 賃貸借契約書等事業所の使用権を証する書類 派遣元責任者の住民票の写しおよび履歴書 派遣元責任者の住民票の写しおよび履歴書 個人情報管理規程 個人情報管理規程
派遣事業よくある質問
Q.派遣元責任者講習とは何ですか?
A.派遣元責任者は、派遣労働者の雇用管理や派遣労働者からの苦情処理など、一般労働者派遣がスムーズに行われるようする人です。
一般労働者派遣事業を行う場合、この派遣元責任者を配置します。
労働基準法などの法律や派遣労働者の雇用管理について勉強するために、派遣元責任者が受けることを義務付けられているのが派遣元責任者講習です。
5年に1回受けます。
講習の実施機関、日程等については厚生労働省や都道府県労働局のホームページで確認することができます。
特定労働者派遣事業の場合は、派遣元責任者講習を受講していなくても届出をすることができます。
Q.一般労働者派遣事業許可申請の要件が厳しいのはなぜですか?
A.一般労働者派遣は、派遣先がなくても給料が支払われる特定労働者派遣事業と異なり、派遣先が決まっているときでなければ給料がないため、派遣労働者は収入がない不安定な状態が続くかもしれません。
そのため、派遣元の会社と派遣労働者との間でトラブルが起こらないように、資産などの要件が厳しくなっています。
Q.一般労働者派遣事業の許可を受けたあとはどんな手続きが必要ですか?
A.許可には有効期間があるため、更新の手続きをします。最初の有効期間は3年、2回目以降の有効期間は5年です。
期間満了の30日前までに更新の申請が必要です。
また、住所や役員等の変更がある場合は変更届を、毎年の事業年度が終了すると3か月以内に事業報告書等を労働局へ提出します。
Q.許可を取り消されるのはどういうときですか?
A.欠格事由に該当したとき、派遣労働法または職業安定法に違反したとき、許可条件に違反したときに、許可の取り消しや事業廃止命令、業務停止命令が出されることがあります。
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