助成金とは
社会保険労務士が扱う、雇用関係の助成金は、条件が合えば予算の範囲内では必ず受給できます。お金の原資は、税金ではなく、会社が支払っている雇用保険料や労災保険料の一部が、助成金として、政策に沿う行動をとった企業に還元されるのです。
雇用関係の助成金とは、返済の要らない、貰いきりのお金です。貸付金とは違いますので、返済が不要なのです。「誰でも欲しい」そう思って当然です。
経営者・社長の中には、「わずか50万円か」と思われる方もあるかも知れませんが、利益率が10%の会社の場合、50万円の収入(科目は雑収入)は売上げに換算して500万円の価値があります。
しかし、いくつかのハードルがありますので、助成金の受給には、それをクリアすることが重要です。もちろん、事業経営にとっても良い影響を与えます。
雇用関係の助成金は、次のことに注意をしておきましょう。
- 運転資金には、使えない。受給できるまで、早くて3カ月長ければ1年以上後。
- 解雇は、助成金の返還理由になります。気の短い経営者の方は、多少の我慢が必要かも知れません。
- 代行申請を依頼する社会保険労務士に無理強いは禁物。ブラックリストに載っている社会保険労務士なら別ですが…。
助成金をもらえる会社
雇用関係の助成金を受給できる近道は、次のとおりです。
- 雇用保険に加入していること。
助成金は、主に雇用保険を財源に支給されますので、雇用保険への加入が必要です。雇用保険は労災保険とセットで加入します。未加入の場合は、まずお近くの労働基準監督署でお問い合せください。
- 税務・給与・労働基準法で義務付けられている書類が、整備できていること。
備え付けが法律で義務付けられている書類が、整備されていることが最低の条件です。例えば、就業規則がないと、もらえない助成金も多く存在します。
- 専門家(税理士・社会保険労務士)を上手く活用していること。
助成金を受給するためには、社会保険労務士に依頼するのが現状では一番です。意外と面倒ですので、経営者・創業者の方には、できるだけ本来の仕事で頑張っていただきたいと思います。
- 事前の「計画」「認定申請」をぬかりなく手続きしていること。
ほとんどの助成金で、支給申請前に「計画」「認定申請」などの事前の手続が必要です。例えば、従業員を採用した後では、受給できない助成金があります。
- 助成金の窓口に問い合わせること。
今は、どこの関係機関も親切です。書類の書き方も丁寧に教えてもらえます。
支給条件に合致していることはもちろん、社内の書類整備ができていない場合、助成金の受給は非常に難しいものとお考えください。
受給のチェックをしてみましょう
会社が雇用関係の助成金を受給できる、基本的な資格があるのか、一度チェックしてみましょう。
(会社がもらえる助成金活用のポイントから参考)
社内備え付け書類は、ありますか?
- 労働者名簿(社員名簿)
- タイムカード(出勤簿)
- 賃金台帳(源泉徴収簿ではありません)
- 労働条件通知書は交付していますか?
労働保険料は納めていますか?
- 労働保険料申告書
- 労働保険料納付済証
税金は納めていますか?
- 所得税徴収高計算書
- 法人税納付済証
- 法人住民税納付済証
就業規則はありますか?
- 65歳雇用義務化の対応は済んでいますか?
- 賃金規程にない手当を支給していませんか?
雇用保険の手続きは適正ですか?
- 週所定労働時間20時間以上の者は、加入させていますか?
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の手続きは適正ですか?
- 加入基準以上のパートタイマーや契約社員の加入手続きをとっていますか?
最近6カ月以内に会社都合で解雇した社員はいませんか?
チェックが入らない場合、助成金を受給できない可能性が高くなります。最低限必要な項目をリストアップしています。会社の人事労務制度整備の目安にしてください。
全ての項目にチェックが入ったからと言って、助成金が受給できるわけではありません、念のため。
助成金受給は管理部門の目標
管理部門(総務人事や経理)は、業績が数字に表れにくい部門です。給与計算や社会保険手続きばかりで、売上げに直結しないのですが、助成金であれば、前述のように「50万円の助成金でも、500万円の売上げ同等の価値」があります。
人事評価制度や目標管理制度にリンクさせることも、有効な考え方です。
助成金よくある質問
Q.当社では、新たな雇い入れや設備の投資も予定ありませんが、何か助成金をもらえますか?
A.残念ながら、何も行動されなければ、雇用関係の助成金をもらうことはできません。従業員を雇ったり、従業員の施設設備を設置・改善するなど、従業員のために何らかのアクションを起こす必要があります。
Q.当社の就業規則は3年前に作ったものですが、これを助成金の申請に使うことができますか?
A.原則として、就業規則は助成金の手続をする時点の労働法に適合したものでなければなりません。最近は、労働基準法を始めとして、労働法が頻繁に改正されているので、この際就業規則の見直しをお勧めします。
Q.最近、リストラで会社都合により従業員を解雇しました。助成金をもらうのに、何か支障がありますか?
A.一般に、従業員の雇い入れなどによって、賃金の補助を受ける場合の助成金は、例えば過去6ヶ月間に従業員を会社都合で解雇していれば、もらうことができません。
ただし、雇用調整助成金・中小企業緊急雇用安定助成金など一部の助成金は会社都合の解雇があっても受給できるものがあります。
Q.もらえる要件が近いような助成金が見受けられますが、一つの事由、例えば社員の雇い入れで複数の助成金をもらえますか?
A.一つの事由では、2つ以上の助成金を重ねてもらうことはできない場合がほとんどです。
例えば、雇用調整助成金、特定求職者雇用開発助成金などの間で併給が禁じられています。
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