M&A(合併・買収)を考えている企業

企業を高く売却するには、どうすればよいのか。
逆に、安く買収・営業譲渡を迫るには、どうすればよいのか。

M&Aアドバイザリーは、多くの専門会社がありますが、人事・労務管理の分野は重要視されていない反面、従業員の雇用に直結するので、個人的には非常に重要だと思います。
従業員あってこその企業です。

人事労務の実態調査

合併・買収は、多くの場合、吸収合併で行われます。
合併先の従業員は、自動的に雇用の継続が求められます。

人事労務の諸制度も同じです。
法令違反が、相当あるようであれば、適法状態にするために、時間と費用と手間がかかります。

しかし、資産査定(デューデリジェンス)は財務状況や事業の将来性が重要視されており、人事労務・労働の分野は後回しです。

ヒト・モノ・カネのうちの「ヒト」に関する調査は、仲介会社・買い受け会社ともに、専門的な知識が少ないため、チェックが緩くなりがちです。

「売る」にしても、「買う」にしても、自社あるいは買収先の人事労務・労働分野の実態は、社会保険労務士や中小企業診断士などの労働法の知識を持った専門家によって、調査されることをおすすめします。

就業規則を始めとする社内規程の調査さえ、不十分なケースが頻発しています。弁護士の先生や監査法人・公認会計士の先生では、ヒト(従業員や人事労務・労働)の分野に限れば、十分とは言えません。

合併・買収後に、余計な作業を増やさないため、あるいはより高く「売る」ために、人事労務監査は最低限の取り組みだと言えます。

労働条件の水準もチェックしておきます。

人事労務コンプライアンス

人事労務・労働の分野では、100%の法令順守はあり得ないと思いますが、少しでも満点に近付けることが、必要です。

人事労務監査の実施によって、問題点が出てきますが、従業員数が300名までの場合は、4カ月から半年で、おおよその項目はクリアできるようにできます。比較的事務処理的な問題が多く、「やっていなかった、知らなかった」類の問題点については、すぐにでもクリアできます。

費用的には、産業医・衛生管理者あたりが直接支出に関係する部分です。

従業員数が300名を越えるあたりから、単純に書類のやりとりで済む問題が少なくなり、制度の運用や、募集・採用にまで踏み込んだ対策を要するものが増えます。期間的には、最低半年、やはり1年程度は見ておく方が良いでしょう。それより短期間であれば、表面上は取り繕ったが、実態は何も変わっていない状態を生むだけです。

前例主義で事務や労務管理をされている企業では、外部の社会保険労務士や中小企業診断士などから、コンプライアンスの支援・助言を受けることで、効率よく、課題クリアが現実のものとなります。

人事労務監査だけでは不十分と思われる場合、あるいは監査報告で指摘事項が非常に多い場合は、この作業を進めざるを得ません。

就業規則・労使協定

見過ごされがちなのが、就業規則と労使協定の整備です。
これらが未整備の場合、すぐに整備を求められるので、早急に整備に取りかかりましょう。

就業規則では、コンプライアンスを念頭に置くことはもちろん、「労働条件の不利益変更」「労働条件のすり合わせ」の問題を考えておきます。

就業規則本則では、そう問題になることはありませんが、賃金規程・退職金規程・慶弔関係では、数値(金額)がはっきりしているため、問題になります。
相手より低い場合は、通常不利益変更は生じませんが、高い場合や良い場合は、すり合わせを行おうとすると即、不利益変更の問題が発生します。

労使協定は、基本的な労使協定は当然整備しておくべきです。

労働トラブルに発展しないよう、労働条件の整備・見直しを就業規則に反映させます。



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