IT関係の企業

IT業界(システム・ソフト・アプリなど)だけでなく、デザイン業界、設計事務所・設計の部署は同じような状況にあります。

労働契約ほか労務提供の実態

IT業界では、労務提供の種類として、雇用以外にも、請負・派遣・業務委託・出向などが利用されています。インディペンデントコントラクターとしての働き方を探る動きもあります。

契約は、民法で「自由」と決められているのですが、実際は他の法律、とくに労働の分野では、労働基準法・労働契約法・労働者派遣法などの労働法で規制されています。

「請負」はモノの完成が目的、「業務委託」は仕様書があり作業手順は任せる、のが民法の解釈です。

しかし、IT業界では、次のような理由から「労働契約」(ほぼ雇用)を締結しないことも現実の問題です。

  • 業務量が一定せず、受注に臨機応変に対応したい
  • 拘束時間が長く、雇用であれば、労働問題に発展しやすい
  • 個人が、雇用を望まない
  • 社会保険や税金の手続き・負担をしたくない

実は、どの業界でも同じ理屈で雇用をしないケースが多いのです。

会社法の改正で最低資本金の廃止などで株式会社を設立しやすくなってからは、「請負」「業務委託」が増える傾向にあります。業務を委託する個人に、受託させるための法人を設立させることも普通です。適正に行われていれば、また順調であれば、全くトラブルは表面化しません。

逆にトラブルは、増加・表面化しやすい状況です。

  • 急に、契約解除を言い渡された
  • 契約額を一方的に下げられた
  • 支払いが常に遅れている

通勤途上で事故に遭ったときはもちろん、過労で労災適用をどうするのかなどトラブルに発展することは日常です。

労務提供が適正に行われているのか、IT関係ではとくに注意したい部分です。

労働時間管理

IT関係の関係者と会話を交わすと、必ず言われます。
「私たちの業界は、長時間拘束が当たり前」
「バグが出れば、クライアントから、すぐに修正を言われる」
「毎日、午前様ですよ」

私は、社会保険労務士であり、民間の人間ですから、どのような言い訳をしていただいても、構わないのです。
が、労働基準監督署の調査(臨検)で、監督官に説明しても、無意味です。
また、裁判になれば、会社側は負けること必至です。

労働時間の管理をして、法律や労使協定の範囲内で、労働するのが、法律の求めるところです。
タイムカード(出勤簿)で出社退社の時刻を記録することが、労働基準法で要求されています。

例え、従業員が長時間労働を個人として是認していたとしても、万が一過労死などがあれば、安全配慮義務違反で裁判となり、企業として時間と費用を掛けることになります。
長時間労働が明らかであれば、企業の側が勝つことは厳しいでしょう。

制度で対応できることがあれば、裁量労働制フレックスタイム制を適用・導入する、連続休暇制度を採用する、などの検討はあって当然です。

長時間労働が原因で、退職者の増加、採用・求人の手間と費用、人材教育の増加が考えられます。
TCOではありませんが、トータルのコストをヒトにも適用するのなら、適切な労働時間管理は、コストカットには有効な手段です。

就業規則・労使協定

長時間労働や、業界の悪習は、経営者・社長が判断しないと、変わりませんが、最低限企業としてやっておきたいことがあります。

それが、就業規則の作成・見直し・整備です。

どの労働時間制を適用すれば、自社の労働実態に適合するのか、それを見極め、就業規則として明文化します。
実際にも、運用をしなければなりません。

問題が表面化したとき、労働トラブルとして企業に来たときには、反論が難しいのが、この業界です。

もう一度書きます。「この業界は、長時間拘束が当たり前」は通用しません。

もし、顧問社会保険労務士さんがいて、「キツイ指導」が無いのなら、責任逃れと言って良いのではないでしょうか。

少なくとも、就業規則や労使協定を整備して、できる限り、それらに沿った運用をする。
それが、会社を守るファーストステップだと言い切ります。



a:3352 t:1 y:1