イギリスの社会保障制度」は、研究テーマですので、この内容をもとにイギリスの社会保障制度について行動、判断することはおすすめできません。作成時期2008年

イギリスの社会保障制度の歴史

1603年貧民法で、労働組合の母体となる労働者階級の互助組織である友愛組合ができ、1911年には国民健康保険法、失業保健法が作られる。
べヴァリッジは1941年チャーチルの命を受け、翌年べヴァリッジ・リポートを提出、この中で、イギリス国家再建を阻む五つの巨悪として・窮乏、貧困・疾病・無知・失業・狭い住居を挙げ、「ゆりかごから墓場まで(From the cradle to the grave)」で表される、人が生まれてから亡くなるまでの一生涯の生活を支援する制度として社会保障制度の充実を訴えている。

イギリスの社会保障制度の軸は、全ての国民を対象とした社会保険制度としての「国民保険」(NIS)、租税を財源とする非拠出給付(児童手当など)や所得関連給付、税財源で賄われ、原則無料の医療サービスである「国民保険サービス」の3本で構成される。医療サービスである「国民保険サービス」については長年の投資不足により手術や入院の長期待機が蔓延化しており医療提供体制の拡大を中心とした改革が求められている。

受益者の掛け金で運営される「国民保険」(NIS)は、退職年金(基礎年金)、国家第二年金、就労不能給付、遺族関連給付、求職者手当、業務災害障害給付のサービスを提供している。

現代、イギリスの年金制度は比較的安定した状況にあるといわれる。
制度は二階建てで、一階部分はNISを財源とする公的年金「退職年金(基礎年金)」が構成し、全ての就業者がこの公的年金に加入する義務がある。
二階部分は「その他の年金」とも呼ばれ、国家第二年金(加入率は34%)、職域年金(同40%)、個人年金(同26%)がある。この部分も1階部分と同様に全ての就業者が選択して加入することとなっている。

イギリス独自の年金システムとして2001年4月に発売開始となった「ステークホルダー年金」がある。
これは企業年金を設けていない企業の従業員を主な対象とした職域年金の一つである。
特徴は金融機関の販売する年金商品のうち一定の要件を満たすものをステークホルダー年金として契約するもので、被用者の掛け金を所得控除することで加入を促す仕組みである。発売当初は注目を集めたが、発売2年後の評価では販売件数の伸び悩み、購入層に関する予測の見込み違いなどを理由に制度の見直しが指摘されている。

二階部分のもう一つの柱である国家第二年金は、所得比例で年金を給付するシステムであって従来の国家所得比例年金に比べると、低所得者に有利な設計という特徴がある。
イギリスでは公的年金の「民営化」が進められており、一定の要件を満たす企業年金、個人年金の加入者は国家第二年金に加入しなくてもよいこととされている。ただし企業年金制度も一般的に運用利回りの鈍化、平均寿命の延びを背景に積立不足が生じており状況は深刻である。こうした事情から企業年金制度ではこれまで主体だった確定給付型から確定拠出型への移行が急増している。

1970年代及び80年代にはイギリスは相当な社会変動を経験していた。
従属率(労働年齢にある人に対する高齢者の比率)の上昇は以前以上に高齢者給付の支払をます方向に向かわしていた。女性、ことに既婚女性がますます労働市場に入ってくるようになっていた。この段階でもはやベヴァリジの考えた社会保障の基礎は崩れつつあった。

彼は女性が家庭にいるものと考え,そうした基礎の上に社会保障計画を画いていた。のみならず,離婚や別居の急速な増加の結果,片親の数は急速に増加していた。これらの人は社会保障給付を多く使っていた。一方,失業者ごとに若年失業者も増加し,全体として社会保障給付は急速に増加していった。

1986年社会保障法による主要な改革は所得補助(Income Support)が補足給付にとってかわった。
すべての資力調査のある給付はそれらが同一の規則にもとづくよう一列にそろえられた。所得補助のなかで,特殊なグループに対する加算(Premiums)は追加のつぎはぎ細工にとってかわった。

イギリスの公的扶助

イギリスの見解

イギリスでは、貧困者が働く能力を持つか、持たないかが明確に区分されている。

働くことができる人には、働く機会を国が提供するため、職業訓練など、就労支援を行う。
働くことが困難な人には援助するということである。

また、貧困の要因が、個人の責任で生じたものなのかそうでないか、社会環境によって生じる要因は個人の責任を越えるとされており、国が責任を持って保障するとされている。

日本の生活保護と比較すると、日本は特に高齢者対象の公的扶助はなく、貧困の要因別に制度は分けられていない。
そして、高齢者に対してはPension Creditという制度を創設した。この制度ができるまではIncome Support(所得援助)でカバーしていた。

Pension Credit

高齢者の最低生活を保障。公的年金も含め、全ての所得を合わせても最低生活水準に満たない場合は、この制度によって不足分を補う。

「働くことができる人には働く機会を平等に与える」を方針のもと、職のない人が職に就けるよう、職業訓練などを積極的に行っている。

また、高齢者には公的年金制度から年金を受けられない人のために、Pension Creditという高齢者のみが対象となる公的扶助がある。



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